第346回 静かな退職に至る本当の原因

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第346回「静かな退職に至る本当の原因」


安田

静かな退職の4類型?

久野

いや、よくこんなのまとめたなと思います。横軸に幸福度、縦軸にパフォーマンスで4グループに分かれていて。幸福度が低くてパフォーマンスが低い無気力型が47%。なんともならない人ですね。20代に比較的多くて、自己啓発もあまりやらない層。

安田

若いのに無気力ですね。

久野

そしてパフォーマンスはめっちゃ低いんだけど、幸福度がめっちゃ高いという自己満足型。

安田

なるほど。頑張らないけど退職はしない人たちですね。

久野

そう。会社にいるんだけど心は退職してる人たち。パフォーマンスは低いけど仕事は快適ってことですね。それが11%。困りますよこんな人がたくさんいたら。

安田

会社が潰れちゃいますね。パフォーマンスが高い方はどんな感じですか?

久野

業務遂行能力が高い一方で、現在の職場や仕事内容に何らかの不満やストレスを抱えている様子が伺える。こんなのは普通じゃないですか。

安田

至って普通ですね。スキルは高いけど職場に不満がある人たち。普通に考えたら転職してしまいそうですけど。辞めないで我慢しちゃうんですね。

久野

そうみたいです。これが17%。そして最後が幸福度もパフォーマンスも高い、ちょっと戦略的な静かな退職型が25%。自らのスキルや経験を生かし、仕事と私生活のバランスを巧みにとる専門的職種に比較的多いそうです。

安田

パフォーマンスが高い方の2つは「静かな退職」ですか?普通っぽいですけど。

久野

私もそう思います。やることをやってくれたらいいんじゃないかなと。

安田

静かな退職って「給料もらってるけど頑張る気がない人」というイメージです。

久野

私もそういうイメージですね。昇進したくないとかは別に問題ない気がします。問題はパフォーマンスが低い方の2つ。

安田

無気力でやる気もない人が47%。職場環境には満足しているけど仕事ができない人が11%。合わせて58%。半分以上いるんですね。

久野

全体の6割は給料に見合わないパフォーマンスだってことです。

安田

残りの4割はガツガツ働かないってことですよね。ちゃんと仕事してパフォーマンスを発揮してくれるならむしろ優良社員ですよ。

久野

ギャラップ社の調査では、そもそも日本人は6%しか熱意溢れる社員がいないそうです。仕事や職場に満足している度合いが139カ国中132位。

安田

低いですね。でも確かに今いる会社や職場が大好きって人は少ない気がします。仕事だと割り切って働いているというか。

久野

割り切って働いている割にはちゃんと真面目にやりますからね。日本人は。

安田

海外の労働者はいい加減だったりしますもんね。飲食店でもコップを乱暴に置いて水をこぼしたり。

久野

日本人は仕事が嫌でもお客さんには当たらないですから。海外に行くと酷いですよ。やる気ない人は座ったままスマートフォンをいじってたり。

安田

日本の問題はやはり「パフォーマンスが低くてやる気のない人」と「パフォーマンスが低くてめちゃめちゃ幸福な人」ですね。

久野

労働法の問題があるからなかなか解決しない。ただインフレが来ているので給料を上げなければ辞めていくかもしれません。

安田

生活が苦しくなって辞めていくか、あるいは我慢して居続けるか。

久野

そうなったら余計やる気をなくして負のサイクルですよ。もう「これぐらいの割合はいる」と割り切ってやってくしかない。

安田

これぐらいって6割もいますよ。パフォーマンスが低い人。

久野

ちょっと多すぎますね(笑)

安田

やはり社員にはロイヤリティや情熱を求めたい。そのためには「利益を上げるために雇っている」という発想を変えないと。もう社員にバレちゃってるわけですよ。

久野

株式会社の目的は利益追求ですからね。

安田

社員を幸福にすることが業績より、株価より、配当より優先するんだって宣言しないと。もう社員は頑張らないですよ。

久野

アメリカの方がもっと利益優先な気がするんですけど。なぜ日本より仕事への満足度が高いんでしょう。

安田

嫌だったら辞めるからじゃないですか。日本人は我慢しちゃうので。

久野

我慢がいちばん良くないってことですね。デンマークは離婚率が50%らしいですけど、仕事も結婚も嫌だったらすぐやめるって言ってました。

安田

それがお互いにハッピーですよ。無理してもいいことなんてない。

この対談の他の記事を見る



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

感想・著者への質問はこちらから