第369回 中小企業に残された選択肢

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第369回「中小企業に残された選択肢」


安田

20〜30代の給料はまだまだ上がりそうですね。

久野

はい。大手と中小の報酬差もどんどん広がっていくと思います。

安田

年収2倍くらいの差がつきますか?

久野

ついてくるでしょうね。このスピードで大手がどんどん離していったら。

安田

中小企業もここ1〜2年頑張って上げてきたけど、もう限界というか。

久野

それでも上げ続けるしかない。このレースを勝ち抜かないといけないから。

安田

人を雇うなら報酬アップは必須だと。

久野

そうですね。ここ4〜5年が勝負だと思います。その後はAIを使っていくことになる。

安田

中小企業も?

久野

はい。売り上げに応じて人が増えないように工夫した会社しか残れないと思います。

安田

とはいえ中小企業ってほぼ労働集約型じゃないですか。社員の頭数が利益に直結する仕組みで。

久野

だから逆にチャンスがあって。労働集約の会社がAIを使って2割人員削減すればめちゃくちゃ儲かるようになります。

安田

生産性が低い2割の人材がいなくなったら人件費だけで数千万円の利益ですね。

久野

そうなんですよ。だからアナログ会社ほど意外とチャンスがあるかもしれない。もちろん事業にちゃんとエッジが利いていればの話ですが。

安田

上流から降りてきた仕事を人間がこなして薄利を稼ぐビジネスは、もう構造的に厳しいってことですね。

久野

厳しいでしょうね。

安田

じゃあ生き残るには、まず給料を増やして4〜5年耐えて、その間に人を使わない仕組みを構築していく。

久野

抜けた人間の何割かを仕組みに置き換えていくことが大事です。

安田

1〜2人抜けたらもうアウトという会社はどうしたらいいんですか?

久野

そういう会社はちょっと無理ですね。

安田

でも、中小企業ってそういう会社が多いですよ。本当に余裕がなくてギリギリの人数で回している会社。

久野

多いですね。そもそも労働集約型じゃない中小企業なんて1〜2割ぐらいで。ウチも他社のことは言えないですが。

安田

労働集約的な仕事は無くしていったほうがいいんでしょうか?

久野

いえ、労働集約は労働集約で仕事はあるわけなので。人に依存しない仕事も増やしていってバランスを取ることがすごく大事かなと思います。

安田

そもそも中小企業には防衛的賃上げが必要だと言われていまして。採用するためじゃなく辞められないための賃上げ。

久野

そうですね。辞められないために上げざるを得ないっていう。

安田

賃上げした分、収益も増えればいいんでしょうけど。

久野

無理でしょうね。給料を増やしたからって働きが変わるわけじゃないから。

安田

ですよね。給料を倍にしても利益は倍にはならない。私も経験しました(笑)

久野

そりゃそうですよ(笑)

安田

人を増やさず売上と利益だけを増やしていく方法を考えないと。中小企業は生き残っていけないですよ。

久野

そのためには商品の磨き込みが必須だと思います。もしくはめちゃくちゃ量をやれるか。どっちかだと思うんですよ。

安田

なるほど。規模の拡大か付加価値商材か。

久野

量をやっている会社はAIとの相性もいいです。掛け合わせると大きな収益が出る。量をやらないままAIを使ったところで大して儲からない。だから量をやれない会社は改めて商品の磨き込みをしなくちゃいけない。

安田

商品に付加価値を付けられないと勝負にならないってことですね。

久野

勝負にならない。両方ないまま進んでいくと恐ろしいですよ。量もやれない、商品の特徴もなかったら、いつか資金が尽きます。

安田

マーケティングに投資する経営者が多いイメージですけど。まずは商品開発に投資した方がいいですか?

久野

商品開発って時間がかかるじゃないですか。マーケティング投資のようにすぐには結果が出ない。だからこそ早く手を打つべきだと思いますね。

安田

そもそも商品力が弱いとマーケティングでも資金力のある会社に競り負けますから。

久野

そうなんですよ。だから経営者は腹を括るしかない。思い切り拡大するか、本気で商品開発に力を入れるか。どっちもやらないという未来はもうないと思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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