地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第71回 「日本の食文化」は世界で戦う武器になる

それでいうと、フランスで開催される「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」っていう世界大会があるんですね。いわばケーキのワールドカップみたいなものなんですが、日本はその上位常連国なんです。

抹茶やゆずを使ったケーキは代表的ですね。もともとヨーロッパにはない食材なので、日本発のレシピがフランスに逆輸入されて使われるようになってきています。そういえばショートケーキも、もともとフランスにはないものなんですよ。

そうそう。最初は不二家さんが始めたんじゃないかな。というのも、ケーキにおいても国ごとに割と好みが分かれるんですね。柔らかいスポンジとか口どけの良さは、あまりフランス人好みじゃない。アメリカはカラフルさや強い甘さがあってこそケーキという感じで、日本とはまた違うし。

わかります(笑)。逆に言えば、日本人ほど「繊細さ」に強い国はない。スポンジの柔らかさとか、甘さのバランスとか、ちょっとした部分に徹底的にこだわる。そういう日本人の繊細な味覚があって、ショートケーキのような国民的なケーキが生まれてきたんでしょう。

そうそう、ほんと高いんですよ。だからこそ、日本の技術力やセンスやサービス精神で勝てると思うんです。ビジネスチャンスというより、純粋に「この値段でいいなら、絶対に自分たちのほうがいいものを出せる」という自信があるというか。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。