泉一也の『日本人の取扱説明書』第4回「共感か行動か」
著者:泉一也
日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。
朝の挨拶「おはよう」。普段、何気なく使っているこの言葉は何なのか。
頭の「お」は丁寧語に分類される接頭語。お母さん、おまんじゅう、お尻など言葉の頭に、風呂敷で包むように「お」という言葉をつける。母さん、まんじゅう、尻といった時と「お」をつけた時の丁寧さの違い。丁寧語は日本独特の文化である。相手にわたす言葉に風呂敷で包み大切に渡す。なんて素敵な文化だろう。逆に風呂敷のない会話になってくれば身近な存在だとわかる。
次に「はよう」これは、「早い」という形容詞である。「早い」という今の状態を伝え確認している。夜なのに仕事の現場に入る時に「おはようございます」というが、それは仕事が始まる前の早い状態を言っているので理屈は通る。今の状態を確認しあって何をしているかというと「共感」である。「暑いなぁ」、「ほんま暑いわ」という今感じていることを互いに共有するコミュニケーションである。
他にも挙げてみると、感謝の言葉「ありがとう」は「有難い」という形容詞が元であり、別れる時の「さようなら」は「左様なら」という互いの様子を確認しあったよね、じゃあね、である。さらにいうと、語尾につける丁寧語の「様」。なぜお尻に様という言葉をつけるのか。「お陰様」のように、その様子を丁寧に表す言葉が様。神ではなく神様なのは、神という個体に直接触れると失礼なので、神の様を表現することで丁寧になる。様という接尾語は、状態を形容する丁寧語なのだ。
日本人のコミュニケーションの軸は、今の状態(様)を感じ合う「共感」といえるだろう。
一方、英語は違う。おはように当たる「Good morning」は、「いい朝ですね」「うん、いい朝だね」という共感の言葉ではない。ある言葉が省略されている。その省略されたものとは、昔ズームイン朝というTV番組でウィッキーさんが言っていた言葉にヒントがある。コーナーの最後に「have a nice day!」と視聴者に言っていた。全文を書くと「I wish you have a nice day!(私はあなたがいい1日を過ごせることを願っています)」。つまりgood morningもI wish you have a good morning.私が皆さんにいい朝を過ごしてほしいという願い、つまり動詞の言葉なのである。感謝の言葉「ありがとう(共感)」と「thank you(動詞)」の関係も同じである。