泉一也の『日本人の取扱説明書』第8回「発酵の国、日本」

たとえば今日というタイミング。今日にいたる流れをつかんでいるか。その流れの中でこのコラムを読んでいると思うが、その縁の感じ方。今だからこその何かを感じるはずである。時の流れを味わい、手を入れ、時には放置する。私は偶然にも日本に生まれ、日本でコーチングをはじめたものの挫折しながら場活に行き着いたわけだが、ちょうど別の世界で挫折をされた編集長の安田佳生さんとご縁があり・・天の時の中でコラムを書いている。

そして地の利とは、発酵の舞台。社員が発酵しやすい「地」があるだろうか。悩みに難題に不満といった陰を大事にし、陽転できるような場のことである。職場に工場に会議室に研修に飲み会に社員旅行に・・陽転の場は無数に作れる。にもかかわらず多くの企業では陽の経営をしているので、ルールに規則という正論(陽)で社員を管理し、発酵しにくくしている。それどころか不正やハラスメントを生み出し腐敗させている。本当は発酵の場など意識するまでもなく、日本にはそもそも発酵の地の利がある。何十万年もかけてできた地理的な風土、そして何万年もかけて築いた文化的な風土にもともと発酵の場があるのだ。酒蔵にはすでに麹菌がすみ、適温適湿になるように作られているように。

最後に人の和。これが発酵菌バカツ株である。人の和とは関係性のことである。関係性が和。和とはのぎへん(=稲)に口。つまりご飯を一緒に食べる「もぐもぐタイム」な感覚。口は話す器官でもあるので、「そだねー」と共感する会話の意味もあるだろう。その人がいると自然と人が集まり、和が生まれるようなバカツ株をもった人材の価値が見えているだろうか。もし社内になければ、外からバカツ株を持って来て社内に広め、培養すればいい。そのうち、漬物や納豆のように臭みがあるけど、いい味を出す人やチームが生まれてくる。臭みを大切に。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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