泉一也の『日本人の取扱説明書』第39回「お人好しの国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第39回「お人好しの国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 

 

日本人の氣質はお人好しである。「お人好し」という言葉の意味は、「大人しくて善良なこと。騙されやすい人」である。善良であるから、人を疑うことなく信じてしまう。オレオレ詐欺が社会的に大問題になるのは、日本にお人好し文化があるからだろう。詐欺の被害者が大勢いてその苦しみを知り、憤りを感じても日本から詐欺が一向になくならない。
お人好し文化は、何千年にもわたって醸成されたものなので、そう簡単には変わらない。

お人好しであることが、ゆるい状態だといいのだが、お人好しの中にある「善良さ」はある条件が揃うと、暴走を始める。その条件とは、善良さを組織内で強要する時である。「善良さ」が「正義」に変わり、その正義という剣で人を断罪しはじめるのだ。会社組織にはよくあることで、お人好しで責任感が強い人ほど、役職がつくと会社の正義を振りかざし部下を断罪し始める。そして断罪されたお人好しな部下たちは、自分の非を責めて罪悪感を持つ。

この正義と罪悪感から生まれた呪縛を「ゴースト」と呼んでいるが、ゴーストはお人好しを支配して組織を動かす。組織的な成果(善)が出ないと正義の断罪が増え、ゴーストは強化され強烈なストレスとなる。そして、心身の病やひどい時には人を自殺にまでいたらせる。ゴーストは法的束縛より強力なので、データ改ざんのような法を破るような不正まで起こさせる。不正が暴かれゴーストの支配から目が覚めた時、もっと大きな社会的罪悪感に苦しめられることになる。

お人好しの集団が一生懸命に組織運営すると、ゴーストが生まれやすい。お人好しであることは、人に優しく人を信じる素晴らしいことなのに、組織内で不幸を生み出す元になっていることを知ると悲しくなる。この不幸を知った人の中には、お人好しであることがバカらしくなり、お人悪しに変身する。そして、詐欺師のような「嘘とごまかしの世界」に生きはじめる。お人好しの社会に詐欺師が多い理由がわかるだろう。

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