泉一也の『日本人の取扱説明書』第76回「ケッカイの国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第76回「ケッカイの国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

令和元年。大型台風の度重なる襲来。川の堤防が次々と決壊し、町は水没した。映画「天気の子」を彷彿させる大水害であった。

その台風によって日本ラグビーの未来をかけた大一番「日本対スコットランド戦」の開催が危ぶまれたが、タイミングよく台風が通りすぎ、多くの人の尽力で試合は実現した。そして劇的な勝利を収めることになる。

幸運にもその場に居合わせたが、台風一過の日産スタジアムは空氣が澄みきっていた。そこに6万7千人の観客。ほぼ日本を応援する客で埋め尽くされていた。超ホーム状態である。試合開始前、台風の被害を受けられた方を想い全員で黙祷。国歌の大合唱を経て、決戦の火蓋が切られた。台風を吹き飛ばすぐらいの熱がスタジアムに渦巻いた。


天災が伝えるメッセージとは何か。今回の天災でもっとも心にインパクトとして残ったのが「堤防の決壊」だろう。堤防とは町を水害から守る結界。その結界が決壊したのだ。

日本には結界文化がある。お守りかお札の一つぐらいは日本人なら誰もが持っているだろう。もしそうなら日本には1億個の結界グッズが流通しているわけだ。そのお守りがある神社の入り口には狛犬が2頭いる。番犬である。そしてお寺にも仁王が入り口で睨みをきかせている。守衛である。番犬も守衛も邪を払う結界である。

堤防の決壊を「結界文化が壊れているよ」という天のメッセージだとするならば、さらにそのメッセージを深く読み解けば結界文化の再生になる。では、読み解いてみよう。

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