泉一也の『日本人の取扱説明書』第76回「ケッカイの国」

狛犬と仁王が何を意味するのか。それは「正義の睨み」である。正義の睨みが失われていることと堤防の決壊が次元を超えてつながっているのだ。邪氣を振り払うのが正義の睨みであり、ワンピースでいうと覇王色の覇気に近い。

日本全体でこの正義の睨みが弱まってきている。この結界が決壊すると邪氣が入り込んで心を浸水させてしまう。正義の睨みが弱まったら、何で我々はカバーするのか。それは監視である。監視カメラをたくさんつけて見張ればいい。どこにいても常に知らない何者かに見張られている社会になっていくだろう。この監視社会では文化は育たない。逆に、その見張りをかいくぐる邪な輩が現れ、いたちごっことなり、監視カメラビジネスだけが大儲けする。すでにドライブレコーダーの売れ行きはすごい。

では、正義の睨みを再生するにはどうしたらいいのか。それはラグビー日本代表の選手たちから学べる。強豪チームに真正面から立ち向かう彼らの姿を見ただろう。互いのチームの覇気がドンとぶつかるスクラムで打ち勝つシーンを見ただろう。まるで仁王のごとくプレーする選手たち。彼らには正義の睨みがあった。キャプテンのリーチマイケルがボールを持つと「リィーーーチ」という地響きのような応援が会場から湧き上がる。リーチに仁王を見たのだ。

この正義の睨みは仁王という言葉がわかりやすく説明してくれる。仁と
王である。仁とは愛。そして王とはリーダーマインドある。愛のあるリーダーマインドを育てること。権力や武力を振りかざす覇王ではなく、自己犠牲と互恵を促す仁王を育てるのだ。

仁王の門を通った先にあるのは、監視社会ではない結界文化の安心安全な社会である。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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