トークから考える商品開発

新商品を開発するとき最も重要なことは売り方の設計である。誰に、どうやって、この商品を売るのか。このストーリーが見えないまま商品開発を行うと運任せのビジネスになってしまう。もちろん新商品が売れるかどうかはリリースしてみないと分からない。だがそれは何も考えずにリリースするということではない。

誰に、どうやって、この商品を売るのか。作り上げたストーリーがハマれば売れる。ハマらなければ売れない。ストーリーを市場に問うことが商品開発の本質なのである。ストーリーのある商品が売れるとは限らないし、ストーリーのない商品が売れないとも限らない。だがストーリーのない商品は売り方がわからない。完全に運任せの商売になってしまう。

運任せにすることとストーリーを市場に問うことは似て非なるものである。ではストーリーとは何なのか。簡単に言えばそれはセールストークである。想定したターゲットが目の前に現れたとき、どのような会話を展開するのか。最初の一言は何か。相手はそれに対してどのような反応を示すのか。次に口を開くのはどちらか。その後どのような会話が展開されていくのか。

私は商品開発を行うとき必ずこのセールストークを考える。商品を作ってからトークを考えるのではなくトークを考えてから商品を作る。ストーリーが市場に受け入れられない状態は、言い換えるなら「練り上げたトーク(会話)がズレている状態」である。どこで会話がズレたのか。ここを考えて修正を繰り返すことでストーリー構築力は上がっていく。すなわち売れる商品の開発力が身に付いていくのである。

すべてはトークから始まる。なぜなら人は「ことば」で考える動物だから。日本人なら日本語で考える。汚い日本語を投げかけられると傷つくし、嬉しい日本語を投げかけられると舞い上がる。感情は言葉によって動かされるのだ。つまり言葉のやりとりは感情のストーリーと密接に繋がっているのである。

会話が進むことで相手の感情はどう変化していくのか。ここを予想してトークを練り上げる。トークの最終地点でどういう商品が現れるのか。どのような商品が現れたら顧客は買いたくなるのか。ここが見えれば新商品の7割は完成したのも同然。逆にここが見えないまま商品を作るのは単なるギャンブルだ。市場に問うべきは練り上げたストーリであって運ではないのである。

 

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