第34回「中東は親日家が多いと聞きますが、どうしてですか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「中東は親日家が多いと聞きますが、どうしてですか?」

   回答   

よく挙げられる理由として2点考えられます。
1つは、日本と中東各国との間で過去にこれといった争いがなかったことです。つまり、ネガティブな要素がないために、好意を持つ下地があるということ。
2つ目の理由は、日本が戦争で原爆を落とされボロボロの焼け野原状態となったにもかかわらず、そこから急速な発展を経て世界第2位の経済大国になったことです。奇跡的とも言うべき復興の事実が、アラブの人々に敬意をもって受け入れられているように感じます。

このように歴史的な背景が取り上げられることが多いのですが、今回はアラブ人が日本に対して良いイメージを持つのに一役買った、あるテレビ番組にフォーカスしてみます。

【日本をベタ褒めする番組】

2005年から2015年まで放映されていた、サウジアラビアの『ハワーテル』という番組があります。
サウジの有名なTVパーソナリティであるアフマド氏が、世界各国の都市を巡りながら現地で見聞きした情報を視聴者に伝えるというシリーズ番組ですが、2009年に放映されたシーズン5は、なんと31あるエピソードすべてが日本を特集したものでした。
内容を一言で言うならば、「日本のベタ褒め」です。

たとえば、日本の公衆衛生について触れたエピソード。
公園のベンチでフライドポテトを食べる日本人グループ。そのうちの一人がうっかり落としてしまったポテトを拾う……という場面に撮影部隊が遭遇するのですが、なんとこれが衝撃的なシーンとして扱われます。
ポテトを拾う場面がズームされ、スローモーションで何度も再生されます。
アフマド氏はポテトを拾った人に、「なぜあなたは落としたポテトを拾ったのですか?」とインタビューします。
「汚れていると周りの人も嫌だろうし、自分で落としたものを拾うのは自然なこと。親からもそう教育されている」と回答する青年に、さらなる衝撃を受けるアフマド氏。
「アラブでは落としたものは気にしないのが普通。もう食べられませんし、清掃員が掃除するからです。でも、日本人は周りへの影響も考えて自分で拾う。アラブ人も見習うべきです」とアフマド氏は語ります。


(↑ポテト拾いのエピソードが紹介されるEp.11。番組終盤、日本を見習ってアフマド氏が自分の子供たちと家の掃除をするシーンが挿入される)

その後も、日本では当然のように行われる行動や習慣に次々とフォーカスしては、褒めちぎっていくアフマド氏。その様子は観ていて大変興味深いです。

(↑番組で取り上げられている事例の一部。すべて過剰な驚きとともに紹介される)

ところで、『ハワーテル』シリーズが放映されていたのは毎年のラマダン月です。ラマダン月は断食をすることで知られていますが、ちょうど日本のお正月のような雰囲気が漂う時期でもあり、親族が集まって一緒にテレビを見たりします。この番組はそういう時期に流れたので、多くの人に視聴されました。
また、サウジアラビアだけでなく周辺アラブ諸国でも放映されたため、相当数のアラブ人がこの番組を見たことになります。

【日本=別の惑星】

このシリーズは現在でもYouTubeで観ることができます。
https://youtube.com/playlist?list=PLFD859E3884F28AB5
アラビア語ですが、わかりやすい作りなので映像だけでも言いたいことは何となくわかります。

(↑番組冒頭には毎回このように特集タイトルが入る。右下のロゴには番組名『ハワーテル』と「改善」の文字がある)

すべてのエピソードを通じて、日本の生活習慣や社会システムが絶賛され、それらを形成する要因として、日本の学校教育で培われる謙虚さが挙げられています。

番組を観た人の感想として、
・この番組を観て人生が変わった
・本当に称賛に値する民族だ
・日本に生まれて日本の学校に行きたかった
・日本人は我々以上にイスラムの教えを実践している
といった声のほか、
・次元が違いすぎる
・日本と比べたら終わりだ
・日本は国ではない。別の惑星である
というコメントまであります。

日本を過剰に持ち上げている部分は多々あるものの、好印象を持たれていること自体は素直に喜んでいいように思います。
(ちなみに「日本は別の惑星」という表現は、アラブだけでなく海外の人が日本の独自性を強調する際にしばしば使います)

【常識のギャップに目をつける】

番組で絶賛されている行動や習慣は、日本では「常識」「当たり前」とされていることばかりです。
その「常識」が海外の人々の目には「新鮮」に映る。
つまり、国や地域によって常識に大きな隔たりがあるということです。
冒頭で述べたようにアラブ諸国は歴史的に日本との文化交流が少ない地域なので、そのギャップはより一層大きいかもしれません。

よく「日本の常識は世界の非常識」と言われます。
また「所変われば品変わる」と言うように、常識が違えば求められるモノも違ってきます。
実際、「こんなものに需要が?」と現地で驚いた経験は一度や二度ではありません。

といっても、モノを売るのはけして簡単なことではなく、ウケるんじゃないかと期待して持っていった商品が手応えゼロだった、というケースは私もかなり経験しています。
しかし、「別の惑星」と称されるほど常識が違う国の商品であれば、思いもよらぬ形でヒットする可能性もあります。

常識のギャップが大きい=未知の部分も大きいということなので、どちらに振れるかは結局のところ試してみなければわかりません。
日本のイメージはすこぶる良いのですから、海外で売ってみたい商品があるならば、トライしない手はないと思います。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ) 

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

 

1件のコメントがあります

  1. 貴方の言っていることだけで親日にはならないと思いますよ。
    もう少し歴史的背景を勉強されないと説得力はありません。
    例えばUAEが独立しようとした時、日本がどういう対応したか?
    内容が浅い記事で誰でも知っていることで、参考にはならない記事でした。

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