第17回「中東にもアイドルはいるのですか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「中東にもアイドルはいるのですか?」

 

どうなのでしょうか?
アイドルという言葉から連想されるような一般的なアイドルグループは、個人的にあまり聞いたことはありません。私が知らないだけかもしれませんが。
レバノンでは「Arab Idol」という番組が制作されているようで、少し調べてみたところ我々が想起するようなアイドルというよりは、若手ミュージシャンを毎週勝ち抜き制で発掘する、といった感じの番組のようです。
アイドルはいないのかなと思いましたが、そもそも「idol」という言葉はイスラムで禁じられている「偶像」を意味するので、怒られる可能性は高そうですし、人気のあるアイドルグループは皆を虜にしますから、神をさしおいて夢中になられては信仰がおろそかになるため良しとしない、ということなのかもしれません。
強いて言えば、一番のアイドルは神です。

……と締めくくろうかと思いましたが、実際興味はないのでしょうか?

冒頭の通り私は中東の人で構成されたアイドルグループは知りませんが、そういうもの自体が受け入れられないのかというと、そんな事はありません。たとえばK-POPを代表するBTSは中東でも人気が高いです。
以前サウジアラビアで行われたBTSのコンサートは、かなりのスピードでチケットがソールドアウトになったと聞きます。ドバイにいる我々のエージェントも「娘が完全にBTSにのぼせ上がっている」と言って笑っていました。

(↑首都リヤドで行われたBTSのコンサートにつめかけたファン。Webより

真っ黒のアバヤ(黒衣)に身を包み、歌い、踊るサウジ女性たち。我々外国人にとってはあまり見ることのない光景かもしれません。2019年11月にサウジアラビアの首都リヤドで行われたBTSコンサート会場の様子を、こちらの動画から少し伺うことができますが、相当な人気があります。

 

また、K-POP程ではないですが日本のジャニーズも少し知られており、「亀梨くんが好き」と言う日本カルチャー好きのアラブ女子に会ったことがあります。
サウジアラビアでK-POPのファングッズを扱うショップに入ったことがありますが、隅の方にはジャニーズのグッズコーナーもありました。
こんな遠い中東の地にまでグッズが届いているなんてさすがジャニーズ、と思う一方でお店のメインはK-POPなので、韓国の国家的エンタメ輸出戦略はやはりすごいと言わざるを得ません。

ところで、その店に入ったときのエピソードですが、店内にいた数人のサウジ女子が私を見るやいなや「え?東洋人顔が入ってきた。韓国人じゃない?」といった感じで近づいてきて、キャッキャと囲まれたことを思い出しました。黄色い声、とまではいかなくとも黄緑色くらいの声援で迎えてくれた彼女たちは、それぞれサウジ系、西アジア系、シリア系の女性で、みなさん顔を出していて非常に美人でした。シリア系の彼女は碧眼で、瞳が宝石のように見えました。
キャッキャ言われて悪い気はしませんでしたが、韓国っぽいと言われること自体が初めてだったので、戸惑いながら日本人である旨申し伝えたところ、「そんな細かい事はどちらでいいんです」的な雰囲気で流されたので大変驚きました。
たぶん東洋人顔なら誰でも良かったのだと思います。
ただ、碧眼のシリア系女子だけは真顔に戻っていました。彼女は韓国人でなければダメだったのでしょう。不必要に落胆させてしまい、申し訳ない気持ちになったことを憶えています。
一緒に写真や動画を撮ってくれと言われ、帰り際にBTSのロゴが入ったチョコレートを渡されました。

 

(↑チヤホヤされた挙句チョコまでもらった)

中東地域の旅行経験者が、「日本人は歓迎される」「なんかモテた気になる」と言うのを聞いたことがある人もいるかもしれません。私も上記の経験から、たしかに頷ける部分があります。今回ご紹介したチヤホヤはK-POP人気にあやかったものですが、日本人としてもアニメやゲームなどポップカルチャー好きの人々から一緒に写真を撮ってほしいと言われたり、気づいたら囲まれていて質問攻めという経験もありました。
ただ東洋人顔というだけで謎にチヤホヤされることがある。こんな場所、世界的に見ても稀有ではないでしょうか。アイドル気分を味わってみたい人は、一度足を踏み入れてみると面白い経験ができるかもしれません。

 

 

この著者の他の記事を見る


 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ)

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

 

感想・著者への質問はこちらから