欠如しているものの正体

中小企業にはマーケティングが足りない。それは戦略的に知名度やブランド力を高め、見込み客からの問合せを増やしていく仕組み。つまりリードを獲得する戦略がないのである。リード獲得を営業マンに依存している会社もあるが、これはまだマシな方だ。そもそもリードを獲得する活動に人も資金も投入していない会社が圧倒的に多い。これでは新規顧客を獲得できるわけがないし、既存顧客から厳しい要望を突きつけられても受け入れるしかない。

この状況を変えるためここ10年で100社近い企業のサポートをしてきた。他社にはない独自の価値を特定して言語化する。必要であれば新たな価値を作り出す。言語化した価値をマーケットに発信し商談を増やしていく。この仕事に取り組んでいく中で私はある重要なことに気がついた。それは中小企業にはセールスという概念が欠落しているという事実である。リードとは言わば商談の芽のようなものだ。育てて刈り取っていくにはセールスが不可欠なのである。

セールス=「売り込んでいく作業」というイメージが強いかもしれない。だが真のセールスはリードを丁寧に育てていく作業である。実はマーケティングとセールスは反比例の関係にある。マーケティングに予算を注ぎ込むほどセールスは必要なくなっていくのだ。大企業やテレビCMを大々的にやっている企業はこのパターン。つまりマーケティングに大きな予算をかけられない中小企業にはセールス力が必須なのである。

「今すぐ申し込みたい」という問合わせは中小企業には来ない。小さな火種を消さないように丁重に扱い、紙や木を焚べて火を大きくしていく作業。これがセールスの役割である。残念ながら多くの中小企業にはこの役割をこなせる人がいない。「セールとは何か」「なぜそれが重要なのか」を教えていないからである。必要なのはスーパー営業マンではない。相手の状況に応じて適切なタイミングで的確な情報を届ける訓練。それがなされていないのだ。

どんなにマーケティング投資をしてもセールス力がゼロでは顧客は増えない。当たり前の話だが、その当たり前が多くの中小企業には欠落している。まずは顧客の要望に応じて的確なトークスクリプトと資料を整える。それを使いこなせるように訓練する。これだけで中小企業の業績は劇的に向上する。

 

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