第55回 仕事の中から「好き」を見つけ出す方法

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第55回 仕事の中から「好き」を見つけ出す方法

安田

中辻さんを見ていると、「好き」という気持ちが物事をうまく進めるための原動力になっていると感じます。


中辻

そう思っていただけてるなんて、嬉しいです(笑)。

安田

でも、多くの人は「好き」だから成功しているわけではなくて。例えば音楽が好きだからミュージシャンになれるわけでも、野球が好きだからプロ野球選手になれるわけでもない。どうしたら中辻さんのように「好き」を「自分の武器」に変えていけるのか、今日はその秘密を聞かせていただきたいです。


中辻

そんな大層なことはしてないんですけど(笑)。逆に聞きたいんですが、なんでみなさん、全く好きでもない仕事を続けていられるんですか? そっちのほうがよっぽどすごいと思ってしまう(笑)。

安田

そんなこと言ったら怒られますよ(笑)。みんな好きなことで稼げないから、仕方なく「生活のため」「家族のため」と我慢しながらやっている。中辻さんみたいに「好きなことをやっていたら稼げました」だなんて、そんなうまい話はない、というのが大多数の人の意見ですよ、きっと(笑)。


中辻

あぁ、そうなんですかねぇ。でも何かしら好きなことがあるから、その仕事を選んだんだと思うんですけれど。例えばミュージシャンを目指していたけど断念して、普通の会社に就職した方だって、働いているうちに会社や仕事内容を好きになるもんじゃないんですか?

安田

なるほど。「好きを極めて仕事にする」のではなくて、「今携わっているものを好きになる努力をする」ことの方が大事だ。そういうことですか?


中辻

そう思いますね。だって私も、今までやってきた仕事のどれも、最初から好きだったわけじゃないですよ?

安田

え、そうなんですか? ちょっと意外です。


中辻

印刷会社に入社した時なんて印刷の「い」の字も知らなかったですもん。好きになる以前の問題(笑)。でも働きながら知識をつけていって「特殊印刷ってすごいな」という感動があったから、そのあと頑張り続ける気になったわけで。

安田

広告のお仕事はどうでした? すごく楽しそうにやられている印象ですが、最初はやっぱりそこまで好きではなかったんでしょうか。


中辻

もちろん興味がゼロだったわけではないです。でも自分が取り組んだ仕事で成果が出て、お客様にも喜んでもらえたらすごく嬉しくて。そういう経験をたくさん積めたことで、広告のお仕事にやりがいや誇りを感じられるようになりましたね。

安田

なるほどなぁ。ということは中辻さんの仕事に対する「好き」は、「昔からずっと野球が好きだったから野球選手になった」というような感覚とはちょっと違うんですね。


中辻

違いますね。少なくとも私の場合は、働いていく中で、その仕事をどんどん好きになっていったという感じです。

安田

きっと中辻さんはいろいろなことを「好きになる」のがお上手なんでしょうね。


中辻

ああ、そうかもしれないです。面白いと感じられることを見つけるのも得意ですし、それを突き詰めていく根性もあるから(笑)、結果として「好き」になっているのかも。

安田

なるほどなぁ。でもそういうのってどうやったら身につけられるんでしょうね? 何かを好きになっていくコツ、とでもいうようなものを。


中辻

うーん、どうかなぁ…。仕事の中に「やりがい」を見つけるといいんじゃないですかね? 例えば私なら競争心が強いので「他の社員に負けないために頑張る」というのがやりがいになったり。

安田

ああ、そうか。ヤクルトレディとして活躍されていた時なんかはまさに、「競争心」のみで成績をアップさせていたわけですもんね(笑)。


中辻

そうそう(笑)。もちろんヤクルト商品がもともと好きだったということもあります。でも「ヤクルト400の売上では、絶対誰にも負けへん!」という目標が仕事の「やりがい」でしたね。

安田

あくまでも「やりがい」を突き詰めていった先に「稼げた」という結果があったわけですね。ということは、「生活のため」とか「とりあえず稼ぐため」という気持ちで我慢しながらする仕事は、そもそもやっちゃダメだよ、と?


中辻

そうですね。というか、そんな仕事をしていても絶対面白くないじゃないですか(笑)。

安田

一説によると、「今の仕事が面白い」とか「ずっとこの仕事を続けたい」と思う人は、日本人全体の2割くらいしかいないらしいです。


中辻

えぇ?! そんなに少ないんだ。じゃあ残り8割の人は、好きでもない仕事を我慢してやり続けているってことですか。なんだか悲しい世の中ですねぇ。

安田

それが現実のようです。ちなみに、一生懸命好きになろうと努力してみても、好きになれるポイントが全く見つからないこともあると思うんです。そういう仕事は、やっぱり辞めるべきだと思いますか?


中辻

私が相談されたら「辞めた方がええんちゃう?」って言うかも(笑)。

安田

そうでしょうね(笑)。


中辻

というか、今お話しててふと思ったんですけど、もしかすると私の場合、「仕事を任せてもらえる」というのがキーだったのかもしれません。どんな仕事でも、任せてもらったことで俄然やる気が出てくるというか。

安田

ははぁ、なるほど。仕事内容とか職場環境とかだけじゃなく、「任せてもらう」ということ自体がモチベーションを上げてくれた。


中辻

そうそう。たぶんそれは私の学歴も大きく影響していて。だってろくに中学も行ってなくて、漢字もまともに書けないような私を「一人前」とみなして信頼してお仕事を任せてくれる。そんなのもう、仕事も上司も好きになっちゃうじゃないですか!(笑)

安田

なるほど(笑)。そうは言っても、やはり中辻さんの「好きを見つけ出す能力」と、それを「形にする能力」には毎回驚かされます。6月オープン予定のベニエ屋さんだって、「ベニエが好き」という気持ちがスタートなわけですから。


中辻

まあ、自分の人生、好きなものがいっぱいあったほうが幸せだと思っているので。これからもたくさん「好き」を見つけて、皆さんに広めていきたいですね。

安田

素敵ですね。では最後に、「今の仕事のどこに『好き』を見い出せばいいのかわからない」という方に向けて、何かアドバイスをいただけませんか?


中辻

えっと…、仕事の中で「燃えられるもの」を探してみるといいんじゃないでしょうか?

安田

ほぉ。燃えられること、ですか。


中辻

はい。私の場合は「営業成績アップ」でしたが、「良いプレゼンをしてライバル社に勝つ」とか「資格試験に合格して給与アップを目指す」とか、なんでもいいんです。とにかく「脇目も振らずに頑張れること」を探してみるといいのかなって。

安田

なるほど。自分が熱心に取り組めるような目標を、なんでもいいから見つけてみようということですね。


中辻

仰る通りです。あとはやっぱり、自分が売っている商品に愛着を持つことかな。同じ営業マンでも「ホンマにこの商品が好きなんやな」という人と、「とりあえず知識を頭に叩き込んでるだけやな」という人と、ハッキリわかるじゃないですか。

安田

確かにわかりますね! で、当然、購入したいと思えるのは前者の営業マンなんですよ。


中辻

そうですそうです。商品を好きになれたことで、結果として売上もアップする。そうすればますますその仕事が好きになれる。そんな風に思いますね。

安田

なるほど。じゃあ今の仕事が全然面白くないと腐っている方は、ぜひ中辻さんのように「好きになれるキッカケ」を見つけ出す努力をしてみるといいかもしれませんよ!

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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