泉一也の『日本人の取扱説明書』第113回「風の国」
著者:泉一也
日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。
小学校4年生だったか音楽会でこんな歌を合唱した。
「風よ吹け吹け、風よ吹け吹け、僕も裸足で駆け出そう♪」
(作詞:山元護久 作曲:小森昭宏)
“僕も”の「も」は何を意味するのか。それは「風と一緒に」という意味だろう。風の擬人化である。
風の神様「風神」がいるように、誰かが風を吹かせていると昔の日本人は感じた。風という自然現象から意思を感じているのだ。それも大いなる意思を。
風に邪が入ると、風邪となる。今、その邪が社会に蔓延していているが、邪が消えると元の風に戻る。邪の本性を見破れば、氷が溶けるように消えてなくなるが、その本性はまだ見えてこない。
それはさておき、私自身、風のように生きたい、天の視座を持って、と願っていたら、風天なる輩になってきた。人呼んで風天の・・と自己紹介をしたくなる最近である。
そんな「風の人」はええなぁと思っていたら、総務省が提唱する「関係人口」にその言葉がドンピシャで出てきた。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々と定義されている。人口減少で地方が過疎状態なので、定住でも観光でもない存在がクローズアップされているのだ。
https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/about/index.html
衰退する殺風景な街に風が吹く。その風とは木枯らし。木枯らしといえば木枯らし紋次郎。そう、木枯らし紋次郎は風の人である。風の人に必要なのは風情。風の情。
「あっしには関わりのねぇことでござんす。先を急ぎますんで。」
と冷たくあしらうが、その冷たさの裏にはあったかい情がある。これが品格を生み出す。
風情という瞬間に流れが生じると、風流になる。風流には文化を感じる。積み重なった歴史の流れがそこにあるからだろう。
風味もそう。風のような味。梅風味というと、梅の味がほんのりと香る。梅の風を食すのだ。「風」は日本人にとって大切な身体知だとわかっただろう。
「場活師さんとお見受けいたしました。風通しの悪いこの日本、どうにかならないでしょうか。お力を貸してくれませんか」
「あっしには関わりのねぇことでござんす。先を急ぎますんで」
泉 一也
(株)場活堂 代表取締役。
1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。
「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。