「ハッテンボールを、投げる。」vol.42 執筆/伊藤英紀
ジョンレノンと、
オレのお母さんはおない歳なのかあ!
中学2年のとき、1970年代半ば、
その事実にびっくりした。
母もジョンも、
1940年(昭和15年)生まれなのです。
好きな歌は?と聞くと、
「赤いリンゴにくちびる寄おせ~て~♪」と、
敗戦直後のヒット曲『リンゴの唄』を
まっさきに挙げる母と、当時、
♪Whatever Gets You Thru the Night!
『真夜中を突っ走れ』を
シャウトしていたジョン。
まったく同時代人として
つながっていなかったので
驚いてしまったのですね。
じゃあ、父は誰とおない歳なんだろう?
たまに買っていた洋画中心の映画雑誌
『スクリーン』で調べてみると、
なんと007のショーン・コネリーではないか。
ときどき徹夜で麻雀をして無精ひげで帰宅し、
母に小言をいわれている父と、
ロシアの美女と会話もそこそこ、
ナイトガウンから胸毛を出しブランデー片手に
速攻でベッドインしちまうコネリーがタメ。
まあ、ちょっとした衝撃でした。
ジョンと母がおない歳という事実を、
自分のなかでいろいろ展開させたりして、
“びっくり”をより楽しんでいました。
たとえば、
「ポール・マッカートニーはジョンより2歳下。
ということは、“イエスタディ”を
ポールが作詞作曲したのは22歳で、
レコーディングは23歳かあ。
1965年だから、僕が3歳のときだ。
イギリスってすごい!ポールってすごい!」と。
僕のコラムはいつもほとんど雑談ですけど、
今回はさらに雑談です。
ジョンと母のびっくり以来、
僕は歴史上の人物の生誕年や
出来事の年代や年号を、日欧米で見比べることが
ちょっとしたクセになりました。
深く歴史を掘り下げるのではなく、
試験のための勉強でもぜんぜんなく、
表面的にサラッと見比べるだけなんですけど、
「へえ~」とか「ええっ!」とか、
自分の中でびっくりすることがけっこう多くて
単純に楽しいわけです。
今でもときどき見比べたりしています。
歴史の勉強をしっかりやってきた人は、
べつに驚かないんだと思いますが、
詳しくない僕の場合は、見比べることで、
点だったものがちょっとだけ
立体的につながったような気がして
楽しいんでしょうね。
縄文土器の時代に、
エジプトではピラミッド建造かあ。
弥生時代に、
ソクラテスやプラトンは哲学してたんだ。
シーザーやクレオパトラは、
イエスキリストより100年近くセンパイかあ。
卑弥呼って、イエスキリストより
200年くらいあとに生まれたんだな。
だいたいモーツァルトと僕の
歳の差くらいあるぞ。
織田信長とミケランジェロは
ほぼ同じ時代を生きていたヒトなのか。
ダ・ヴィンチがモナリザを描いたのは、
信長が生まれるちょい前。ふ~ん、
日本の戦国時代は、ルネッサンス期と
かぶるんだなあ。
歌麿の浮世絵や、弥次喜多珍道中は、
産業革命やフランス革命のあたりで、
北斎が、蛸と海女がぬらぬらとからむ
あのエロチックな絵を描いたのは、
マリー・アントワネットが死んでしばらく後か。
お、歌麿や北斎とベートーベンやゲーテは、
だいたいおなじ年代の芸術家なんだなあ。
大久保利通とか吉田松陰が生まれた時代に、
アンデルセンは親指姫とか人魚姫とかの
童話を書いていたのか。
(べつにおもしろくもなんともないですか?
すみません。
途中でやめるわけにもいかないので、
つづけますね。)
へえ、マルクスとショパンと
ドストエフスキーもおなじころのヒトじゃん。
江戸末期から明治のアタマなんだあ。
マルクスがじいさんの頃、
岩崎弥太郎は三菱をつくったのかあ。
2人はおなじころに死んでるなあ。
福沢諭吉も似たような歳だ。