第14回 オーナー経営者の出口とは?
少し前、お世話になった経営者が亡くなられました。
私の結婚式にもいらしてくださいました。
経営されている会社で、5年間ほど働かせていただきました。
公私ともにお世話になり、様々なことを教えていただきました。
もっと話をすることがあったのではないか。
恩返しをすることができなかったな。
と、個人的には後悔することばかりしかありません。
【オーナー経営者の死は企業の死ではない】
創業経営者であったその方が亡くなられても、会社は存続しています。
企業は現金が回れば、存続することができます。
もし借金があったとしても、借り換えをし続ければ、実質借りっぱなしで問題ありません。
金融機関は、企業が存続する前提で融資しているので、
(担保の有無や連帯保証はあれども)貸しはがしをすることは、あまりありません。
従業員も給料を受け取ることができれば、仕組みとして会社は機能します。
経営者によって、経営方針は違っていても安心して給与をもらえるのなら、
多くの従業員は残って仕事をする判断は、よく理解できます。
オーナー経営者が亡くなったとしても、すぐに企業は死にません。
【オーナー経営者の勘違い】
上場企業では、経営権と所有権が明確に分けられているため、
法律に基づいて、金銭のやり取りがおこなわれるようですし、それが普通なのだと思います。
私の仕事上、オーナー経営者からは、
社員を子供のように見ている話を、常日頃から聞いています。
自分がいなければ会社がまわらない。
社員には任せることができない。
今回も、なにかあったら私にもできることがあるかもしれないと、
残された遺族や、社員さんたちがどのように行動するのかを、
そっと見守っていました。
結果:なにも起きませんでした。
オーナー経営者がいなくても、仕事はまわっていました。
オーナー経営者がいなくても、経営責任を分担していました。
オーナー経営者がいなくても、資金繰りはまわっていました。
寂しい話ですが、オーナー経営者の会社への思い入れの強さや
自意識の高さが、勘違いをうんでいたのかもしれません。
【企業は死なない、新しい会社になる】
オーナー経営者は経営権と所有権を両方持っていることが多く、
亡くなった場合に、残された人たちが所有権と経営権の利害関係を調整できず、
その場合は、解体の憂き目にあいます。
いずれにしても、経営権を持ったものが、所有者の判断を仰ぎつつ、
故人の遺志とは無関係に、企業運営がなされていくのです。
企業という同じ箱は存続していても、オーナー経営者が亡くなった時点で、
違う意思を持った人による、新しい経営が始まっています。
これは、新しい会社が始まっているとも言えます。
オーナー経営者が自身の死後のことを考えるのは難しいですが、
企業という箱と、会社経営というものは、出口が違いそうです。