第24回 「<変化しない>がリスクになる時代」
お医者さん
最近はどんどん新しいテクノロジーが出てくるな。興味はあるけど、うちはもう10年以上前にオーダーメイドのシステムを組んじゃってて、新しいサービスには手が出しづらいんだよなあ。
お医者さん
ていうか、いざ壊れたら誰にも直せない、みたいなシステムも多いらしいし、大丈夫なんだろうか。ウチだけどんどん時代に取り残されてる感じがする…。
オーダーメイドのシステムだとかなりお金もかかったんでしょうね。簡単に方向転換できないくらいの費用が。
絹川
お医者さん
そうなんだろうね。「高い金出して作ったすごいシステムなんだから!」って、上の先生たちは言うんだけどさ。僕ら若手世代からすると「いや、むしろかなり時代遅れだけどな」って感じ。…って、どちらさまですか?
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
そういうお悩みは、古くからあってお金も持っている病院さんでよく聞きます。オーダーメイドなので確かに使いやすくて便利だったんでしょうが、それから時間がたった今、既製品とは違うということが逆に問題になっている。
絹川
お医者さん
ああ、下手にオリジナルなカスタムをしちゃってるぶん厄介なんですね。
ええ。ベーシックな既製品のままだったら直せる人は多いですし、アップデートも比較的簡単なんです。でも、カスタムした分、「わかる人にしかわからない」という状態になっている。
絹川
先ほど「壊れたらもう誰も直せないシステムがある」と仰ってましたけど、まさにそういうことなんです。
絹川
お医者さん
うーん、頭痛くなってきた。何か解決策はないんですかね。
そうですね。思い切ってシステム刷新をするしかないでしょうね。しかし今度は、フルオーダーメイドではなく、「サービスの組み合わせ」でシステムを構築するのがいいと思います。
絹川
お医者さん
サービスの組み合わせ?
ええ。今の時代のようにどんどん新しいサービスが登場する中で、「1つのシステムを使い続ける」という選択自体がリスクなんです。そうではなくて、それぞれのサービスを「部品」と考えて、時代の流れに合わせて臨機応変に付け替えていくイメージです。
絹川
お医者さん
あ〜、わかる気がする。病院がスマホだとしたら、そのときに必要なアプリを入れて、いらなくなったアプリは削除して、ってことですよね。
まさにそんなイメージです。ベンチャー企業がどんどん新しいサービスを投下しますから、そこにちゃんとアンテナを張っておいて、必要なものを取捨選択して取り入れていく。そうすれば病院のシステムも常にフレッシュな状態を保てるということです。
絹川
お医者さん
ああ、それは僕ら世代にはしっくりくる考え方です。…でも、上の先生たちはどうかなあ。納得してくれるかなあ。
以前からいらっしゃる先生方も、本当はどこかで不安を感じているとは思いますよ。特に、同世代の方が「リモート診察」とか「ネット受付」なんてことを言い出すと、「俺たちもやった方がいいんじゃないか」と思うものですから。
絹川
お医者さん
うーん、でも、ウチの先生たち、けっこう頑固だからなあ。サービスやシステムより、今は人材不足の話ばっか口にしてますよ。優秀な若手が採れない!とか言って。
ああ、実はシステム刷新は採用にも大きな効果を発揮するんです。
絹川
お医者さん
え? どういうことです?
実際、どうですか?古いシステムに執着してずっと変わらない病院と、新しいサービスを柔軟に取り入れている病院があったら、先生ご自身はどちらで働きたいと思います?
絹川
お医者さん
そりゃもちろん、後者ですね。なるほどなるほど、確かに効果ありそうですね。今の若手たちは僕以上にそう感じるだろうし。
ええ。システムが変われば、病院のオペレーションだけでなく、病院自体の雰囲気も変わってきます。それをうまくPRすることができれば、スタッフだけじゃなく、患者さんも増えるかもしれない。
絹川
お医者さん
いいですね〜。人も採用できる、患者も増えるとなれば、先生たちもさすがに無視はできなさそうだ。
そうですね。昔は一つのシステムをずーっと使うのが当たり前でしたけど、今は「どれだけ柔軟に変化できるか」が重要ですから。
絹川
お医者さん
うん、おかげでちょっと希望が持てました。僕らも諦めず、先生たちに掛け合ってみます。
ぜひぜひ!
絹川
お医者さん
「詳しい話を聞きたい」ってなったら、絹川さん来てくれます?
もちろんです!お任せください!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。