第41回「店舗デザインとブランディング」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第41回  「店舗デザインとブランディング」

佐藤可士和展にいきました。
会場に入ると、企業ロゴがズラリと並んでいます。セブンイレブン、NISSIN、楽天などなど。そうそうたる企業です。他にもホンダ「ステップワゴン」のTVCMや、SAMPのCDリリースに関する屋外広告など、誰もが一度は目にしたことのある作品ばかりでした。

カタログによると、佐藤可士和さんがブラディングにおいて、一貫して追求してきた戦略は目に触れるあらゆるものをメディアと捉え、アイコンにすること。その基本となるのはロゴですが、商品も、店舗も、建築物でさえも、コンセプトを伝達するアイコンへと変貌させてきた。とのことです。

例えば、2019年から携わっている「くら寿司」のブランディングでは、白木で統一された机や椅子、大きなやぐらといった店舗の内装が、「和」「日本」「伝統」といった印象をストレートに想起させます。内装が日本の食文化を表すアイコンになっているかのようです。

未来コンパスが指すミライ

この店舗の内装は意匠権で守られているのですが、実は、国内ではじめて登録された建築物(内装)の意匠です。


意匠登録第1671153号(意匠権者:くら寿司株式会社)
【意匠に係る物品】回転寿司店の内装


従来は「物品」を保護対象としていた意匠法ですが、改正により、2020年4月から建築物についての出願が認められました。くら寿司のように店舗の内外装に工夫を凝らし、ブランド価値を創り出そうとする企業の活動に対応したものです。

意匠権の存続期間は出願日から25年。それなりに長い期間ですが、企業が時間とお金をかけて、外部のプロをも活用して生み出したブランドの保護期間として考えると、足りないようにも思います。
それを補いうるのが商標です。
特許庁の審査において、店舗の立体的形状のみからなる商標の登録は、かなりハードルが高いのですが、長年の使用により、消費者が店舗を見ただけで くら寿司だと識別できるようになれば登録が認められます。意匠権で模倣を排除しつつ、長年の使用実績を作っていくことで商標登録(=半永久的な店舗デザインの保護)の可能性がでてきます。

法律による保護が確立したことで、特徴的な店舗のデザインをブランドと捉え、長年にわたって活用する企業が増えそうですね。美しい空間が好きな私にとっては嬉しい未来です。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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