200通目「人間だからこそ」大野

人間交換日記

「すべての人は、すごい可能性を秘めている」と信じる大野と、「多くの人は目的などなくただ存在しているだけ」と断ずる安田。人間の本質とは何か。人は何のために生きているのか。300文字限定の交換日記による言論バトル。


200通目/大野からの返信
「人間だからこそ 」

自説が正しいということの主張なら、安田さんの言う通りになりますよね。ここにも前提の力学が解釈に強い影響を与えていたのが理解できます。そもそも人は絶対的に完璧にわかりあえやしない。これが僕の持論。何もこの交換日記に限った話ではない。
しかしながら、抽象度を上げれば、結局、ふたりが言っていることが同じだということも見えてくる。そして、それはつまりは、人間はなりたいものになれる。なったものがなりたかったものだったと言う順序の場合もあるけれど。また、なりたいものになれなかったように見える状況であっても、ほんとうは「その状態」になりたかったって自分に気づいたりもできる。人間だからこそ。

前回199通目/安田「だって人間だもの」

大野さんへ

すれ違いもここまで来れば清々しいです。きっとこのやり取りは世の中の縮図なのでしょうね。お互いに悪気がない。どちらかというと相手をリスペクトしてる。それなりの人生経験を重ねているし、ちゃんと考えながら生きている。それでもすれ違う。価値観とは本来このようなものなのかもしれません。宗教戦争が起こるのも、国や民族間の諍いが絶えないのも、根っこを辿れば価値観の違いなのでしょう。もうここは認め合いましょう。お互いが正しいのだと。すれ違っていてもいいのだと。分かり合えないということを分かり合う。きっと人類にいちばん欠けているのはそこなのです。相手を説得しようとすればするほど、自説が正しいことを主張すればするほど、どんどん溝は開いていきます。納得はいかない。でもそれでいいんじゃないでしょうか。だって人間だもの。

ー安田佳生より

 

前々回198通目/大野「あなたにはその能力がないという無自覚の見立て」

安田さんへ

赤ちゃんは大人が頑張れなんて言わなくったって、何度も歩こうとします。勿論、無理するななんて言っても効き目がありません。仮にちょっとぶつけて血が出ても、生命は血を止めようと働き出す。これが本然的な人間の生命活動、即ち生活です。つまり、生きようとする。成し遂げようとする。だから、あえて問いたい。本当に誰の声なのか分からないのでしょうか?また、できないのは自分の問題の意味する所は、誰もが乗り越える力を持っているという場所に立っているのか?の違いではないのか。あなたにはその能力がないという無自覚の見立て、見下しをどこか大人がしているから、バランスを取る事が必要なんて考えが出てくるのではないでしょうか。

ー大野より

 

これまでのやり取り

交換日記をする二人



火曜日
安田佳生(やすだ よしお)

1965年生まれ、大阪府出身。
2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

●金曜日
大野栄一(おおの えいいち)
株式会社一番大切なこと 代表取締役
https://ichibantaisetsunakoto.com/
https://www.sugoikaigi.jp/coach/eiichiono/

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