第96回 商売とギャンブル

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「飲食業は廃業率が高い。」
私がこの事実を知ったのは、1号店を開業した後でした。

この比率は昔も今もあまり変わっていないようで、今の時代ならネットで検索すれば、いかに飲食業で廃業する事業者が多いかはすぐに分かります。

こうした統計は国がまとめたものですから、事実なのでしょう。

ただ、私が開業前にこの事実を知っていたとしたら、飲食業をやらなかったのかと考えると、そうは思いません。なぜなら商売はルーレットのようなギャンブルとは異なり、自分で勝率をコントロールできるものであり、このギャンブルとの違いこそが商売の面白みだと思うからです。

「飲食業は廃業率が高い。だからやめた方がいい。」

こうした内容の発信をネットで時折目にします。
確かにこれは一見、筋が通った考え方のようにも思えます。

でもこの考え方は、廃業率の高い業界を避ければ自分の廃業率も低くできるという考え方であり、確率で自分の商売を決める行為と言えます。私にはこの考え方が、商売とギャンブルを混同しているように思えるのと同時に、自分で確率をコントロールしようとしない商売が面白いものになるとは思えないのです。

商売はギャンブルとは違うということ。
成功か失敗かの確率は自分次第で変えられるということ。

統計などに左右されることなく、自らの意志で決めた商売だからこそ成功確率を高めるために試行錯誤を続けられるのであり、試行錯誤を続けられるからこそ成果に近づくことができるのではないでしょうか?

逆に言うなら、自らの本当の意志に目を向けることなく、商売の廃業率という外部の統計データに左右されて選んでしまった商売こそ、試行錯誤を続けるのは困難であり、どんなに廃業率の低い商売を選んだとしても、試行錯誤すること自体を楽しめない商売が上手くいくことなんてないと思うのです。

 

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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