第119回 子供からの教え

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

Reeflet読者の皆さま、2022年もどうぞよろしくお願いします。

さて、我が家では年明け早々に子供の誕生日というイベントがあります。
そんなタイミングという事もあり、先日子供に「誕生日プレゼント、何が欲しいの?」と聞いてみたところ、意外にも私が予想していない答えが返ってきたのです。

それが「おもちゃ売り場を見ないと分からない」という答え。

てっきり何かしら具体的な商品を挙げてくると思っていた私はそこで一瞬驚いた訳ですが、少し考えてみると妙な納得感が湧いてくるのと同時に、この答えには商売にも通じるヒントがあるような気がしたのです。


「おもちゃ売り場を見ないと分からない」という答え。
これは言い換えるなら「何が欲しいかは選択肢がなければ決められない」という事であり、ニーズが不明確な状態と言えます。

じゃあニーズが不明確だからといって何も欲しくないのかというと、当然そんな事はなく、おもちゃ売り場に行けば何を買ってもらおうかと悩むことになるでしょう。

私たちはよく、商売をする上で「顧客のニーズ」という言葉を使います。
その上で、こう考える訳です。

「顧客のニーズに合わせて商品を作ろう」と。

これは開業当初の私も同じでした。
お客さんたちがどんな商品を求めているのかを聞き、その要望に応えた商品を用意すればお客さんはお店に来てくれるはず、と考える。

でも現実は違いました。
お客さんの要望に応えているにも関わらず、集客が伸びることはなかったのです。

なぜお客さんの要望に応えても集客が増えなかったのか?
今から振り返って思う、その答え。

それは、大人も子供と同じで「自分のニーズをお客さん自身が分かっていない場合があるから」だと思うのです。

だからお客さんに要望を聞いたとしても、その答えが必ずしも本当のニーズではない場合が多く、結果的にお客さんの要望通りに商品を用意したはずなのに売れないという事が起こるのでしょう。

じゃあ私たちが商売をする上で、顧客のニーズを掴むためにできる事とは何なのか?

その答えこそが、子供の言葉にあった「見ないと分からない」という事であり、私たちが先に明確な商品としての選択肢を提示するから、お客さんはそれが欲しいという事に気づけるのであり、ニーズを聞いてそれに応えようとしている限り、本当のニーズにたどり着くことはできないということ。

これがニーズを聞き続けても売れる商売にはならない原因であり、ニーズに気づける選択肢を提示するから売れるようになるのだと、改めて子供から教えられたような気がするのです。

 

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから