第140回 民間保険と社会保険

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第140回「民間保険と社会保険」


安田

コロナで保険金の支払いが増えてるそうです。保険会社も大変ですね。

久野

ぜんぜん大変じゃないと思います。

安田

そういえばネットに書かれてました。むしろ余裕だとか。逆に宣伝になって儲かるみたいな。

久野

そう思います。

安田

保険会社ってそんなに儲かるんですか。

久野

民間保険の試験を受けると分かります。もともと保険会社って絶対潰れない仕組みになってるんですよ。

安田

絶対に潰れない仕組み?

久野

保険金って死亡率を見て決めるわけで。お金集めます、確率的に1年間でこれぐらいの人が亡くなって、支払いこれぐらい出ます、みたいに。統計学で緻密にやってる。

安田

コロナも想定内ってことですか。

久野

コロナ程度では潰れないです。むしろ宣伝ですよ。メディアを上手く使ってます。

安田

想定外の大量死って保険が出なかったりしますよね。

久野

戦争とかの場合はそうですね。保険の約款を読むと、暴動とか、戦争とか、そういうのは出ませんと書いてあります。

安田

コロナは大丈夫だと。

久野

そう思います。約款を読めばわかるでしょうけど。

安田

約款なんて読まないですよ。とんでもなく小さな文字で書いてあるし。

久野

小さい文字でびっしりと。しかも保険の約款って、すごく分厚くって。

安田

あれを全部読んで理解するのは不可能でしょう。

久野

一応は説明義務みたいなのがありまして。

安田

保険の営業マンが面倒くさい説明をしにくるやつですよね。

久野

そうです(笑)「ちゃんと説明しましたよね」っていう。

安田

はんこ押さなきゃいけないんですよ。

久野

「説明を受けました」っていう署名をしなきゃいけない。

安田

説明の途中で「もう勘弁してくれ」ってなります。同じようなことを何回も聞かされて。

久野

同じではないんでしょうけど(笑)

安田

だんだん催眠術にかかっていくみたいに、「はいはい」って言いながらはんこを押していくんです。あれは絶対、聞くのが面倒くさくなるように作ってある。

久野

周到に作ってあるんでしょうね。あとで問題が起こらないように。

安田

保険会社が損しないように?

久野

どうしてもそうなりますよ。利益目的でやってることですから。

安田

社会保険制度は違うんですか。

久野

社会保険制度は公的扶助という考え方なので。ビジネスとしての効率は悪いです。国にお金がプールされて、出すときは、もうわりと惜しみなく出す仕組み。

安田

民間の保険よりずっといいって、いつも久野さん言いますよね。

久野

何かあった時の保障はすごいですよ。民間の保険は死亡以外かなりシビアじゃないですか。皆さん、気付いてないかもしれないですけど。

安田

気付きませんでした。

久野

民間で唯一、掛けた以上に返ってくるのは死亡保険だけ。

安田

入院とかケガの保障もついてますよ。

久野

補償内容にもよりますけど、ケガや病気は「自分で貯金した方がいいんじゃないの」ぐらいのレベルです。

安田

「保険入っててよかった」って、よくテレビでCMしてますけど。

久野

20歳のケガならメリットあります。55歳でがんになっても、20歳から掛け金分を貯めておけば同じような補償になる。その程度の補償しかされてないってことです。

安田

でも20代で死んじゃう人もいますから。

久野

それは掛け捨てで十分な気がします。日本人は掛け捨てが嫌いですけど。

安田

賃貸が嫌いなのと一緒ですかね。払って何も残らないのがもったいない気がして。みんな積み立て式のほうに入っちゃいますよね。

久野

そうなんです。

安田

でも積立式って、確かに自分で貯金してるのと変わらない気がします。

久野

自分で貯金してる方が全然いいですよ。

安田

じゃあ保険は掛け捨てだけ入っておいて、あとは自分で貯金するのが正しいと。

久野

まさに正しいですね。ネットで証券口座つくって運用して、死亡保険だけ定期の掛け捨てに入ってたほうが、みんな潤うと思う。

安田

保険の営業マンはそんなこと言いませんよ。

久野

それはやっぱり保険会社がよしとしないので。

安田

会社が儲からないってことですか。

久野

利益目的ですから。

安田

やっぱり入るなら社会保険でしょうか。

久野

私はそう思います。

安田

サラリーマンは強制ですけど、フリーランスは入らない人が多いですよね。

久野

法人化しないと社会保険は入れないですから。

安田

社会保険に入るだけでも法人化する価値はありますか。

久野

あると思います。死んだときの遺族年金とか、障害年金っていうのが、すごく大きいですから。

安田

「もう年金は出ないかも」って言われてますけど。

久野

みなさん年金に目が行き過ぎなんですよ。あくまでも保険ですから。

安田

年金はおまけみたいなもんだと。

久野

そうです。意地でも社会保険に入らないフリーランスが多いですけど。

安田

確かに多いですよね。

久野

それで民間保険にはたくさんお金を払ってる。よっぽど効率が悪いのに。

安田

保険会社に騙されてるってことでしょうか。

久野

保険会社は商売なので騙してはいないです。やっぱり勉強不足なんですよ。それでお金ないって言ってる人も結構いますから。

安田

ちゃんと勉強すれば社会保険に行き着くと。

久野

すごくよくできてますから。

安田

アメリカでは国民皆保険に反対する人も多いです。どうしてなんでしょう。

久野

アメリカは何もないところから、今からつくろうって話なので。日本のプラットフォームはもう既に凄いんです。

安田

そんなに凄いんですか。

久野

勉強すればするほど凄い。凄すぎてフリーランスになるのが怖いっていわれるぐらいなので。しかも掛け金がすごく安いし。

安田

私はひとり法人で社会保険に入ってますけど。そんなに凄いとは知りませんでした。

久野

私が法人化したのは「自分が社会保険に入りたいから」です。言ったら怒られるけど(笑)

安田

社員を雇う予定がなくても法人化してましたか。

久野

絶対に法人になって社会保険に入ってたと思います。

安田

凄い信念ですね。

久野

だって無理なんですよ。老後の年金を厚生年金なしで貯めるなんて。国民年金1本でいくと、とんでもない老後が待ってると思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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