第83回 「漠然とした不安の理由」
お医者さん
これから医療の世界はどうなっていくんだろうな…。人口減少で患者が減っていくのは目に見えているし、コロナ禍の影響もあって治療のオンライン化も進んでいると聞くし。
お医者さん
とはいえ、うちの病院はそんなにダメージを受けていないんだよなあ。むしろコロナ前より調子がいいといってもいいくらいだ。
お医者さん
うまくいっているんだから、無理に体制を変える必要はないよな。…でも、なんだろう、なんとなく嫌な予感もするんだよな。いつかこの状況がガタガタっと崩れてしまうような…。
お悩みのようですね、先生。
絹川
お医者さん
うん、悩んでるんだ。悩んでるんだけど、でも、いったい自分が何を悩んでいるかがよくわからないんだよ。ただボンヤリと嫌な予感がするっていうだけの話で…って、あなたは一体?
はじめまして、ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
いろいろなお医者さんの話を聞いていると、先生のようにいわゆる「漠然とした不安」を感じている方は増えているように感じます。
絹川
お医者さん
やっぱり? それってやっぱりコロナの影響なのかな。
それもあるでしょうね。コロナ禍はあらゆる業界のIT化・オンライン化を進めました。医療ビジネスも例外ではありません。今後、仮にコロナ問題が沈静化したとしても、オンライン診察や電子処方箋の流れは止まらないと思います。
絹川
そういった目まぐるしい変化を前に、何十年も同じビジネスを続けてきたお医者さんが戸惑いを感じるのは無理もないことです。かといって、じゃあどんな対策を取ればいいのか判断がつかない。これは先生のように、今までのやり方で問題なく経営できている病院ほどそうでしょう。
絹川
お医者さん
うん、よくわかるよ。売上がガクッと落ちるとか患者さんが激減するとか、そういうわかりやすい課題があった方がズバッと判断できそうだもんね。
お医者さん
でも、実際この悩み…悩みというか妙にソワソワする感覚というか、これの本質ってなんなんだろう。絹川さんはどう思う?
様々なケースがあるでしょうから一概には言えませんが、いろいろな先生の話を聞く中で、共通した一つのキーワード、つまり課題の本質が見えてきました。
絹川
お医者さん
おお、それは何?
ズバリ、集客です。
絹川
お医者さん
ん、集客?
ええ、もう少し具体的に言えば、「集客方法を自分でデザインしたことがない」という不安です。
絹川
お医者さん
集客方法を…自分でデザイン…
これまで病院というのは、お医者さんの腕がちゃんとしていれば、ある意味何もしなくても患者さんが来てくれた。しかし、こうして誰もが簡単にネットで情報検索できる時代には、「どうやって集客するか」をきちんとデザインしないと、他の病院にどんどん患者さんが奪われてしまうということなんです。
絹川
お医者さん
ああ、なるほど…。確かにそれは本質をついているかも。悩みが漠然としているのは、仮に自分で集客方法を考えなければいけなくなっても、どうしていいかわからないだろうっていう負い目があるからなんだ。
仰るとおりです。そして実際、遅かれ早かれそのタイミングは来ます。2025年が外来患者のピークと言われていますから、あと数年で頭打ちになる。
絹川
お医者さん
…つまり絹川さんの結論としては、仮に経営がヤバい状況になかろうが、今のうちから「集客方法」について考え始めておくべきだ、ってこと?
そういうことです。オンライン診察も電子処方箋も、要するに集客の「手段」でしかない。ネット予約なども同じです。いつ実装するかは別として、シミュレーションは早く始めるに越したことはないでしょう。
絹川
お医者さん
なるほどねえ。うん、なんとなく靄が晴れた感じだ。もしよかったら絹川さん、議論の壁打ち相手になってくれないかな。
もちろんです!そういうの大の得意ですので!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。