第178回 お店の時間感覚、お客さんの時間感覚

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

3月と言えば引っ越しのシーズン。
皆さんがお店を経営している街へ新たに引っ越してくる方もいらっしゃると思います。

そんな時期ということもあり、今回はこの時期に私のお店で意識して取り組んでいる事について書いてみようと思います。


引っ越しシーズンに入ってお店に起こる変化。
それが新規のお客さんの来店増加だと思います。

当然ですが、引っ越しで街から出ていかれるリピーターさんもいる訳ですから、この時期に来店してくれた新規のお客さんにいかにリピートしてもらえるかが今後の売上に影響してくると言えます。

そして、この「新規来店→リピーター」という流れを作る上で、私がとても大切だと思っているのが「来店から数分間の体験」なのです。

お客さんがお店のドアを開けた時にすぐに気付ける体制ができているか?
誰も気づかず入口付近でお客さんを不安にさせていないか?
席へ座るまでの流れがスムーズにできているか?

言葉に書き出せば、どれも当たり前のように思えるかも知れません。
ただ私自身、初めてのお店に入った時にこうした不安を感じる瞬間は、未だに結構多いと感じるのです。

なぜ、お店側からしたらどれも当たり前と感じている事なのに、お客さん側からしたら不安を感じるという事態が起きるのか?

私なりに考える、その答え。
それは「お店側と新規のお客さん側の時間感覚のズレ」だと思うのです。

お店を開業してから毎日10時間以上、私はお店に立って接客をしていました。
その時に気づけなかったのは、私からすれば新規のお客さんをご案内するのは、10時間のうちほんの数分に過ぎないものの、新規のお客さんからすればお店の印象が大きく左右される数分だったということ。

今から思えば、この時間感覚のズレに気づかずに新規のお客さん達へ不安を感じさせてしまっていた事が、少なからず私のお店にリピーターが増えなかった要因の1つになっていたと思うのです。

お店にとってほんの数分は、新規のお客さんにとってお店の印象が決まる長い数分。
だから、お客さんがお店のドアを開けてからの数分間のストーリーを見直してみる。

「そんな細かい事を…」と感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、そんなお金も時間もかからない細かい事だからこそ、改めて見直す事で「このお店に来て良かった」と安心感を提供できるのであれば、やらない手はないと思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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