この世に売れないものはない。
どんな商品でも必ず売れる。
それは、エスキモーに冷蔵庫を売る、的な話ではない。
根性があれば売れるとか、凄まじい販売力があれば売れるとか、
そんなことが言いたいのではない。
販促費さえ使えば、商品など誰でも売れる。
いとも簡単に売れていく。
たとえば、道端に落ちている石ころを、
100円で売ることは可能なのか。
もちろん、可能である。
そこに1000円分の商品券を付けておけばいいだけだ。
馬鹿にしているのか、と怒られそうな話だが、
そもそも商売とはそのようなものなのである。
もちろん現実には、
100円の商品に1000円の商品券を付けて売る人はいない。
なぜなら、儲からないからである。
売れば売るほど損をする。
そんな馬鹿げた商売をする人がいるわけがない。
そう思われるだろうか。
だが実際には、そうやって赤字を垂れ流し続けている会社は、
たくさんあるのだ。
考えてみて欲しい。
なぜ彼らは、赤字を垂れ流し続けるのか。
もちろん、彼らだって、
赤字を出したくて出しているわけではない。
赤字になってしまった、というだけの話なのだ。
それは言い換えるならば、「売り方を間違えた」ということ。
100円の商品に、
100円以上の販促費をかけてしまった、ということだ。
家賃、光熱費、製造原価、人件費、などなど、
商売をしていれば様々な経費がかかる。
その合計が、売上を超えてしまった、という単純な話なのだ。
問題なのはその経費を、販促費だと考えていないことである。
全ては販促費である、と考えるべきなのだ。
売上ゼロの会社が存在しないように、
売れない商品もこの世には存在しない。
存在するのは、黒字の会社と、赤字の会社。
すなわち、儲かる商品と、儲からない商品である。
売れない、は間違い。儲からない、が正しい。
たとえばブランド品を思い浮かべて欲しい。
エルメスのバッグは、なぜあんなにも高いのか。
稀少だから。
手間がかかっているから。
みんなが欲しがるから。
もちろん、それらは全て正しい。
だが経営者なら、そのように考えるべきではない。
なぜ高いのかというと、
それだけ販促にお金をかけているからである。
有名女優が使っている。
みんなが羨ましがる。
自慢出来る。
それは、そうなるように、販促費をかけているからだ。
そして、どんなに高い販促費だろうと、
それを上回る価格で販売しているから、
エルメスは儲かるのである。
いい商品であることは、重要だろうか。
たしかに色が剥げていたり、すぐに壊れたりするようでは、
ブランド品にはならない。
だが壊れないからといって、ブランド品になるわけではない。
手の込んだ作りも、材質の良さも、アフターフォローも、
全ては販促費の内訳に過ぎないのである。
もう一度言おう。
この世に、売れない商品はない。
全ては売り方にかかっているのだ。
開発費、原料費も含め、全ては販促費なのだ。
何に、どのように、販促費を使って、いくらで商品を売るのか。
販促費を制するものが商売を制するのである。
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