第137回 「電子カルテの次は何をシステム化する?」
お医者さん
まったく、今や何でもDXの時代だな。医療業界は動きが遅いけど、それでもIT化の波は確実に押し寄せてきてる。
お医者さん
うちのクリニックもさらなるシステム化を目指すべきなんだろうな。電子カルテは去年導入したから、今年は何をシステム化しようかな。
確かにいよいよ医療業界も本格的にシステム化が進んでますよね。
絹川
お医者さん
そうなんだよ。だからもっと積極的にITを取り入れていきたいんだけど……って、あなた一体どなたです?
初めまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
お医者さん
へえ!じゃあうちみたいなクリニックのシステム化も手掛けているの?
そうですね。基本的には電子カルテが専門なので、その手のご相談をいただくことも多いですよ。
絹川
お医者さん
そうなんだ!それはいいところに来てくれた。次は何をシステム化すればいいか、ちょっとアドバイスしてよ。
そうですね……個人的にはこれ以上のシステム化はまだ必要ないんじゃないかと思いますね。
絹川
お医者さん
……は? 必要ない?
ええ。既に電子カルテは導入されているということなので、それで十分かなと。
絹川
お医者さん
ちょ、ちょっと待ってよ。これだけ世の中がシステム化しているのに、これ以上は必要ないって?
ええ。システム化が進んでいるとは言え、電カルどころかレセプトを手書きしているクリニックも実はまだあるのです。レセプトを手書きするのは時間がかかるのでそこはシステム化するべきだと思いますが……
絹川
お医者さん
でも、カルテだって電子化が進んでいるでしょ?
そうですね。大病院ではそれが標準になりつつあります。大病院には部署がたくさんありますから、紙カルテが別の部署に出庫されていると情報が閲覧できませんよね。
絹川
いろいろな部署を回ってから会計に来るので、結果として患者さんの待ち時間も長くなる。カルテを電子化すればこの問題はなくなります。つまり大病院では電子化に明確なメリットがあるわけですよ。
絹川
お医者さん
む……うちみたいな個人クリニックだと、そのメリット感も小さいと。
はい。メリット感が小さいどころか、電子化することでむしろ手間が増えるかもしれません。スタッフ同士の声掛けで済んでいたことを、複雑なシステムでやる理由はあるだろうか、ということです。
絹川
お医者さん
でも……待ち時間の短縮以外にもメリットはあるでしょ?
確かに、デジタルの状態で情報管理ができるので共有も簡単ですし、算定漏れの防止にも効果的です。でもいずれにせよ、やはりそのメリット感は病院の規模に比例する印象です。つまり端的に言って、小さなクリニックでのシステム化は効果を実感しづらいんです。
絹川
逆に、「電子カルテの入力に一生懸命で患者の顔すら見れなくなってしまった」なんて声もあったりします。いずれにせよシステム化というのは、それ自体が目的ではないということを意識する必要があります。
絹川
お医者さん
うーむ、なるほど。確かにそうかもしれない。まずは「どんなクリニックにしたいのか」を明確にすることから始めるべきなのかもね。
仰るとおりです!「システム化すれば状況は良くなる」と盲信せず、あくまで自分のクリニックの状況に応じて必要なシステムを入れていくのがよいと思います。
絹川
お医者さん
そうだね。うん、ちょっと冷静に慣れた気がするよ。ありがとう!
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。