第209回 来ない理由を考えたお店の行き着く先

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

集客は「お客さんが来ない理由」よりも「お客さんが来ている理由」から考える。
私はいつもこれを意識しています。

というのも、目の前の通りを歩いている人たちが自分のお店に来ない理由は無数の可能性が挙げられる一方で、今お店に来てくれているお客さんが自分のお店をリピートしてくれている理由はいくつかに絞ることができるからです。

つまり、「お客さんが来ている理由」から集客を考えた方が取り組むべき選択肢も絞りやすく、かつ実際にお店に来てくれているという結果が出ているため、成果にたどり着きやすいということ。

そしてもうひとつ。
私が集客を「お客さんが来ない理由」から考えないのは、この視点には大きな問題があると感じているからなのです。


お客さんが来ない理由を考えることの問題点。

それは、答えが無数に挙げられることだけでなく、その答えを一つずつ消していこうとするほど、誰のためのお店なのかが分からなくなっていってしまうという点。

一言で「飲食店」と言っても、お客さんがお店に求めるものはバラバラです。

そのため、仮に自分のお店が提供したい価値とは異なる価値を求めるお客さんが来てくれたとしても、結果的には満足してもらうこともなく、リピートもされないでしょう。

そこでもっと多くの人に満足してもらおうと考えると、どうしても「商品ラインナップを増やそう」とか「価格の幅を広げよう」といった方向へ向かってしまい、対象を広げすぎてしまった結果、誰にも選ばれないお店に近づいていってしまうと思うのです。

「お客さんが来ない理由」をなくしていった先にあるのは、決して「お客さんが行きたくなるお店」ではなく、単なる「こだわりのないお店」であり、来ない理由の延長線上に来ている理由がある訳ではないということ。

だから「お客さんが来ない理由」からではなく「お客さんが来ている理由」から考える。

いま自分のお店にお客さんが来ている理由は何なのかを考え、その魅力をより掘り下げ続けるお店にこそ、お客さんは集まるのだと私は思います。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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