本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
このコラムの内容は、自身の店舗経営における失敗を振り返る回が大半です。
そんなコラムを書いてきて、つくづく思うのです。
「よくまぁ、これだけ失敗してきたものだ」と。
今から振り返れば、やる前にもう少し慎重に考えれば避けられた失敗もあるとは思いますし、そもそも失敗話なんかよりお店で実際に成果が出ている具体的な取り組みについて書いた方がはるかに読んでくれる方も増えるような気もします。
じゃあ何で自分は失敗話ばかり書いているのだろうと今更ながら考えてみると、それはやはり失敗した経験こそが自分の役に立っていると感じているからだと思うのです。
商売でできるだけ失敗を避けようと考えるのは当然だと思います。
失敗すれば投資したお金と時間が無駄になりますし、失敗の規模を間違えれば商売の継続そのものができなくなってしまう可能性もあるわけです。だからこそ、他人の上手くいった事例が求められるのでしょう。
では、失敗を避けるために他店の成功事例を真似し続ければ商売が上手くいくのかと考えてみると、そうも思えません。
なぜなら他店の成功事例とは、そのお店の立地やタイミングなど、様々な状況が一致しない限り再現は難しいですし、他店を真似し続けている限り自分のお店ならではの売れるモデルは作れないと思うからです。
つまり、失敗を避けたいのは当然ではあるものの、失敗を避けようとし続ければ商売が上手くいく訳でもない、ということ。
もちろん、進んで失敗しようなんていうつもりはありません。
ただ、単純に他店の成功事例を真似して上手くいかなかった場合と、自ら仮説を立てて取り組んだ結果が上手くいかなかった場合を考えると、そこからの学びがあるのは後者であり、そんな学びの差が積み重なって、中長期で見た時の大きな業績の違いを作り出しているような気がするのです。
私たちは失敗という結果を一括りに捉えてしまいがちですが、その失敗には学びの有無によって2つの種類があり、商売を続ける限り失敗は避けて通れないのであれば私たちが意識すべきなのは、学びのある失敗を選択することなのではないでしょうか。
短期で見れば同じ失敗に見えたとしても、中長期への投資となり得るのは自分で考えた結果の失敗の積み重ねしかなく、短期で成果を求めるあまり自分で考えず安易に他店の真似をする失敗の積み重ねこそが、本当の失敗に近づく選択なのではないか、と私は思うのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/