その91 しるし

もう30年以上昔話ですが、
当時盛り上がっていたバンドブームのコンテンツで
「いかすバンド天国」というTV番組がありました。

音楽関係者が審査をしてアマチュアバンドが競い合うという内容で、
今思えば出演バンドの多くはセミプロ級やプロデビューを目前にしており、
プロモーションの意味合いが強かったのだなあ、ということが窺えます。
それでも、テレビカメラの前でスレていない
ある意味何をするのかわからないような出演者たちの雰囲気は
アマチュアを活かしたコンテンツの王道という感じで、番組も人気がありました。

あるとき、
タンクトップで演奏していたバンドメンバーの肩口にタトゥーが入っているのを見て、
審査員が「それ本物だよね?気合入ってるねえ」と指摘しました。
そのバンドはのちにプロで大活躍して名を残したために
放送時の内容が動画サイトで見られるのですが(こういうのすごいですよね…)、
今見ると手のひら程度のサイズで、決して派手なタトゥーではありません。
自分もたまたまリアルタイムで見ていたのですが、
そのやりとりは覚えていました。

昭和平成の境目くらいの話ですから
今と比べるといろいろなことが「汚い」時代です。
現在の社会基準でいえば通らないことが常識であったことも多かったわけですが、
ことタトゥーに関しては真逆のように思えます。
当時、「その道の人」でないのに刺青を刻んでいることは
まだプロになってもいないのに
ロック音楽に対する不退転の覚悟を示しているということであり、
それに対して審査員は「気合」と評したのでした。

現在は刺青、タトゥーは海外の影響をどんどん受け、
個人によってそのとらえ方が異なることは前提として
昔と環境がまったく違っていることは確かです。
町中にタトゥースタジオが普通にあったりしますしね。

それでも、たとえば海外のヒップホップアーティストが
体にあきたらず顔の上にお絵描きをどんどんを入れていくような感じを
一般の日本人が受け入れられるようになることは今後もないでしょう。

タトゥーがイコール反社というイメージは変わったかもしれませんが、
その代わりとして、アウトサイダーの印のひとつではある、という
無意識的な共通認識が成立しているようにも思えます。

海外の人がやっているように、カジュアルにタトゥーを入れる感覚は、
30年前の「気合」とはずいぶん違いますが、
周囲との差異を形にするという現象では同じことだからです。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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