第256回 夢のような育児休暇制度

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第256回「夢のような育児休暇制度」


安田

育休で手取り10割ってどういう意味ですか。

久野

国としては育児休業を男女共にとらせたいわけです。

安田

なぜですか?

久野

少子化の理由が「旦那が手伝わないから」と思ってるんでしょうね。

安田

つまり男も育休を取れば「出生率は上がっていく」という予想なんですね。

久野

そういう側面があるでしょうね。今は育児休業を取ると給与保証が67%ぐらいなんです。

安田

なるほど。それを100%にしようってことですね。

久野

子供が産まれたらお金がかかるじゃないですか。「休んでる場合じゃないでしょ」となるから10割保証するよと。

安田

それが法律で決まったんですか?

久野

2025年を目処にやろうという話です。

安田

なるほど。

久野

男女ともに14日間以上取ると10割取得できる制度で。まだ細かいところは決まってないんですけど、恐らくかなりの期間保証されると思います。

安田

実現したらすごいですね。

久野

すると思います。半強制的に「子供が1歳になるまで旦那が会社を休んでも生活できるようにする」という方向で検討に入りました。

安田

検討に入ると大体実現しますもんね。

久野

ほぼ実現しますね。

安田

これって14日以上取らないと出ないってことですか?

久野

14日以下だと短すぎるので。まず1ヶ月くらいでスタートして伸ばしていくと思います。

安田

最終的には1年まで伸ばしていくと。

久野

そのくらいになると思います。ただ会社に復帰する前提なので、経営者側との交渉が必要だと思うんですけど。

安田

経営者も何割か負担するんですか?

久野

いえ、国が全額払うので経営者は負担しません。ただ「これだけ人不足なのに休ませるのか」っていう議論も出るわけですよ。

安田

なるほど。でも会社負担0って凄いですね。

久野

会社の社会保険料負担も免除です。年金だけが積み上がります。

安田

すごいじゃないですか。

久野

はい。手取りが10割保証されたら社員は絶対に休むはずなので。

安田

手取りが保証されたら半年〜1年休む人も出て来そうです。

久野

まずは28日でスタートしますけど伸びていくと思います。

安田

本気で出生率を上げるんだったら1ヶ月じゃ話にならないですよ。

久野

そうですよね。1年とか2年とか。

安田

最低半年じゃないですか。生まれてから最初の半年ってめちゃくちゃ大変なので。

久野

10割保証なら普通に休みますよね。

安田

逆に休まないと家庭が崩壊しますよ(笑)

久野

「あなたはなぜ休まないんだ」って奥さんに言われるでしょうね(笑)

安田

でも出生率が上がるかどうかは疑問ですけどね。欧米では旦那さんが子育てにすごく協力的ですけど出生率は高くないし。

久野

とはいえ、お金の部分は大きいと思いますよ。

安田

確かに大きいですよね。とくに若い人はお金がないから。

久野

ハンガリーでは3人目を産むと所得税がゼロになります。

安田

所得税ゼロ?それは凄い。

久野

日本でもそのくらいやらないと。高齢者の方は月10万以上の年金をもらってますからね。一人産んだら5〜6万円ぐらいは毎月出してあげないと。

安田

日本はなぜこんなに高齢者に手厚いのか。

久野

高齢者には怒られるけど出しすぎだと思います。

安田

困っている高齢者にだけ出せばいいのに。余裕のある高齢者にこんなに払う必要があるのか。若者の方がよっぽど困ってますよ。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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