第4回 外的報酬と内的報酬

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第4回 外的報酬と内的報酬

安田

根本的な話なんですけど、「従業員満足度」って何なのでしょうね。具体的に何を示すのか、わかるようでわからないというか。


藤原

そうですね。最近だと「ウェルビーイング」とか「従業員エンゲージメント」なんて言葉で表現されたりもしますね。

安田

結局大事なのは給料とか待遇とか勤務時間とか、要するに労働条件なんじゃないの、と個人的には思ったりもするんです。


藤原

あるいは仕事自体のやりがいなんかも含まれますよね。

安田

ああ、確かに。労働条件と仕事のやりがい、どちらが大事なんですかね。従業員満足度のプロである藤原さんはどう思います?


藤原

これはもう「両方大事」ですね。「外的報酬」と「内的報酬」という言葉で表されたりもしますけれど。ベースとして外的報酬(労働条件)はある程度高くないといけません。ここが極端に低ければ、やはり満足度は上がらない。

安田

そりゃそうですよね。どんなに面白い仕事でも、月給1万円じゃやってられない。


藤原

そうそう。一方で、仮に外的報酬がすごく高くても、そこで得られる満足度って実は限度があるんですね。その先はやっぱり内的報酬、つまり仕事のやりがいや高揚感、人からの感謝なんかが必要になってきます。

安田

つまり外的報酬は必要条件であって十分条件ではないと。


藤原

仰るとおりです。だから会社は外的報酬だけでなく、内的報酬も提供できる存在になっていかないといけないわけです。

安田

でも藤原さん、かつては「仕事は辛くて当然」「楽しさなんて求めちゃいけない」と思ってたんですよね(笑)。随分変わったんですねぇ。


藤原

おかげさまで(笑)。途中で気づけて本当に幸運だったと思っています。

安田

でもね、そうやって藤原さんは変われたかもしれないけど、世の中の経営者ってまだまだ「利益至上主義」の人が多いと思うんですよ。先日お話してくれた理念やクレドなんかも、結局は会社のイメージアップのため、つまり利益のために作ってる会社が多いんじゃないですか。


藤原

確かにそれは否めませんね。

安田

そういう意味で、外的報酬はまだしも、内的報酬の提供ってけっこうハードル高いんじゃないかと思うんです。現実問題として、お客さんからの感謝を得づらい仕事はあるわけで。


藤原

それは非常に重要なポイントです。私自身、従業員満足度研究所の他にもう一社、いわゆる実業をやっている会社を経営していますが、中には地味で面白くない仕事もあるわけですよ。

安田

そうですよね。ほとんどの仕事がそうだと言ってもいいくらいですよ。


藤原

でもそこは考え方なんです。たとえばパッケージを組み立てる仕事をしている人に、「あなたがこうやって組み立ててくれることでこういうことに繋がっているんだよ」「このパッケージがこんな風にお客様の満足に繋がっているんだよ」と伝えるだけでちょっと変わってくる。

安田

ほう、なるほど。


藤原

あるいは「シールを貼る」という仕事があったとして、「このシールにはこんな意味があって、これがあることでこんな人たちが喜んでいるんだよ」と伝えてあげる。そうすると、毎日だたシールを貼っていただけのスタッフから、「このシールの位置はもう少し右側の方が良いんじゃないですかね」なんて提案が出てきたりするわけですよ。

安田

ああ、素晴らしいですね! つまり働く人の視点が変わるんだ。よく言うあれですよね、「石を積む仕事と思うか、教会を建てる仕事と思うか、はたまた世界を平和にする仕事だと思うか」っていう。


藤原

まさにそういうことなんです。そういう意味で、内的報酬をどんどん高めていくことはできるんだと思っています。私自身も現在進行形で挑戦中です。

安田

なるほどなぁ。とはいえ、ですよ。たとえばマクドナルドで働いている人が、「このお客さんはお腹が空いていそうだから、お肉を2枚入れてあげよう」なんて勝手にできないわけじゃないですか(笑)。つまり、工夫の余地がない会社もあるんじゃないですかね。


藤原

それは確かにそうなんですけどね。でもここがまた人間の面白いところなんですが、「工夫しなくていい仕事の方が満足度が高い」って人もいるわけですよ。

安田

ああ! なるほど。


藤原

先ほどのシール貼りの例でも、「私は工夫とか面倒だから、言われた場所にただただシールを貼っていたい」っていう人もいる。つまり、満足を感じるポイントは様々なんです。

安田

おもしろい。従業員満足度と一言で言っても、その内容は人それぞれということなんですね。いや、奥が深いなぁ。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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