第130回 失敗を「致命的」にする感情の罠

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第130回 失敗を「致命的」にする感情の罠

安田

失敗は成功の母だ」みたいなことってよく言われますよね。成功するまでやり続ければ、失敗も成功のイチ要素になると。私も常々そう思っていて、事業の相談を受けると「一回やっただけでうまくいくわけない」とよく言うんです。


藤原

そりゃそうですよね。一回で成功する方が珍しいですし、そもそも失敗を経験していない人の成功って、どこか脆い気がします。

安田

そうですよね。ただその中でも、やってはいけない失敗もあると思うんです。例えば同じ失敗を繰り返すとか。


藤原

ああ、確かにそうですね。学ばずに何度も同じことをやっていたら意味がないですから。

安田

そうなんです。それともう一つ、致命的な失敗もやってはいけないんだろうなと。ただこれが難しいのは、「どこからが致命的なのか」という線引きで。


藤原

これは非常に難しいですよね。例えば安田さんはワイキューブという会社を一度精算されていますが、人によっては「致命的な失敗だ」と言うかもしれない。でもそれを経て今の豊かな人生を歩んでいらっしゃることを考えると、そうだったとも言い切れないわけで。

安田

ええ。会社が潰れても命を取られるわけじゃないですし、やり直しはききますから。でも私自身の経験から言うと、もうちょっと早く踏ん切りをつけていれば、社員もそこまで傷を負わず再生できたんじゃないかという後悔はあるんですよ。


藤原

なるほど。戦闘機のパイロットの脱出と同じで、敵機から攻撃を受けた時いつ脱出するかが問題なんですね。時には恐怖を感じても踏みとどまる必要もあるけど、それでタイミングを逃してしまうと命取りになる。

安田

ええ、まさに。だから人にアドバイスするときには、「潰れるところまではいかない方がいいよ」とは言いますね。


藤原

それでいうと、「やり直せるかどうか」が一つのポイントなのかもしれませんね。第二次世界大戦中、日本軍は飛行機が撃墜されたら飛行機もパイロットも失ったんですが、アメリカ軍はパイロットが脱出して生還できる設計を重視していたそうなんです。

安田

人間という「資源」を守る発想ですね。失敗しても人さえ残れば立て直せると。


藤原

ええ。飛行機が落ちても人間が生き延びれば、また別の飛行機で戦える。その発想が戦局を分けたんじゃないかと言われていて。事業でも同じで、最後のセーフティネットを確保しておけば、思い切って挑戦に行けるんじゃないかと思うんです。

安田

私も自分が会社を潰しているので、業績が悪化して銀行借入が返せないという相談を受けることがあるんです。私がいつも言うのは、銀行借入はしょうがないとして、消費者金融やカードローンにまで手を出したらもう撤退した方がいいと。


藤原

それはそうですよね。金利の高い借入で事業を回し始めたら、もう後がなくなる。

安田

ただ小さい事業をやっている方ほど、個人のカードローンで一時的に回しちゃうんですよ。それで撤退の決断が遅れてしまう。


藤原

ギリギリまで粘ってしまうんでしょうね。会社が潰れても人生が終わるわけじゃないのに、多くの方がそこを致命的だと思い込んでしまう。もっと言えば、それこそ命を絶ってしまう方もいらっしゃるわけで。

安田

そうなんです。実際は逮捕されるわけでもないし、永久に借金がつきまとうわけでもない。私は会社を潰しても死ぬわけじゃないとどこかで思っていたので、法律で守られている部分をクリアにしてやり直す方を選びました。でもそう割り切れない方が多いんですよね。


藤原

優れた経営者の方って損切りが上手ですよね。店舗を閉めるにしても、ギリギリまで引っ張らずに損失を確定させる。そういう会社ほど結果的に伸びている印象があります。

安田

諦めたらそこで試合終了ですよ」という有名な漫画のセリフがありますけど、あれを神格化しすぎてカードローンしてまで粘ってしまうと危ないですよね。

藤原

ああ、あの言葉の使いどころを間違えている人は少なくない気がしますね。

安田

そうそう。とはいえ、少しやっただけで損切りだと言っていたら事業なんか立ち上がらないわけで。本当に損切りが上手な人は、感情を横に置いて、こうなったら撤退するというルールをスタートする前に決めている。

藤原

自分にとっての致命傷がどこなのかをあらかじめ決めておくということですよね。それができない人は、感情に引きずられてタイミングを逃してしまう。

安田

致命傷の線を感情が冷静なうちに引いておくということが大事なんでしょうね。

藤原

そう思います。あらかじめ決めておくのが苦手だとしても、今はAIに自分の判断を投げてみるのも一つの手ですよ。私も取引先との交渉で感情的になったとき、書いた文章をAIに見せると「ここは感情を出さない方がいい」と諫められたりして。冷静な第三者として使えるんですよね。

安田

ほう、なるほど。結局、感情に左右された時点で失敗は致命的になるということなのかもしれませんね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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