第120回 理想的な美容師の働き方は、チケット制度で実現できる?

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第120回 理想的な美容師の働き方は、チケット制度で実現できる?

安田

岩上さんのサロンは「チケット制度」にすることで、1回あたりの顧客単価を下げて来店頻度を増やし、結果的に年間売上をアップさせることに成功していますよね。でもちょっと不思議なのは、来店頻度が上がれば仕事量も増えるはずなのに、なんで残業もなく完全週休二日制でやれているのか、っていうことで。


岩上

…なんででしょうね(笑)。

安田

岩上さんご自身もわからない?(笑) きっと何か仕掛けがあると思うんですが…


岩上

そうだなぁ。仕組みが変わったことで、仕事の中身も変わったからなのかもしれませんね。

安田

ほう。もう少し詳しく教えていただけますか?


岩上

ウチのお客様って、だいたい9割の方が事前にチケットを購入されているんですね。そうなると皆さん、既に料金は払い終わっているわけだから、サロンに来店された時に施術料金のことをあまり気にされないんです。それもあってか、僕の声のかけ方も「今日は何時間お店にいられますか?」っていう感じに変化していって。

安田

え、でもそれって予約の段階である程度決まっていると思うんですけど、わざわざ再確認するんですか?


岩上

病院に例えるとわかりやすいかもしれない。風邪だと思って病院へ行って、自己申告だけでお医者さんからパッと薬を出されるなんてこと、ありえないじゃないですか(笑)。

安田

確かに確かに(笑)。まずちゃんと診察をしてもらわないと。


岩上

そうそう。だから僕は、最初のカウンセリングでしっかりと髪の状態を見たり、お客様の困りごとを探ったりするわけです。そして「そのお悩みを解消するには、こういうメニューがありますよ」とご提案する。その時に「通常はこの値段だけど、チケットだったら何枚分でできますよ」とお伝えするわけです。

安田

そうか、チケットで既に購入しているから、その場で追加料金を払う必要もないですもんね。それはかなり心理的なハードルが下がりそうです。


岩上

まさに仰るとおりで。さらに「まだチケットが残っているから、ヘッドスパも追加しちゃおうかしら」なんて流れにもなるわけです。

安田

なるほどなぁ。お客さん側としては、一見、チケットを使うと1つひとつの単価は安く見えているけれど、お店側から見るとお客さんの単価は上がっている、と。…いいことづくめじゃないですか!(笑)


岩上

笑。しかも、最初にお伺いした「滞在可能な時間」の枠内で、お客様がやりたかったことや提案させていただいたことを全て終わらせるので、お客様もハッピーな状態になっていただけるっていうのもありますね。

安田

でも施術内容が増えると施術時間も増えていくんじゃないんですか?


岩上

確かにカットもハウオリも、それ単体だと施術時間は60分かかるんですが、カット+ハウオリだと実際は90分程度で終わるんですよ。だからお客様は予約段階で「カットとハウオリで2時間かかる」と思っているんですが、そこに「トリートメントを足しても、2時間で終わりますけど、どうしますか?」と新しいご提案ができるわけです。

安田

あ〜なるほど。同じ2時間なのに、チケットの消費枚数が増える=客単価が上がるというわけですね。


岩上

お客様としても、通常の料金を払うよりチケットを使う方が圧倒的に安くなるので、いろいろとやりたくなるんだと思います(笑)。あとはやっぱり「場の価値」がすごく大事なんじゃないかという気もしていて。

安田

場の価値、ですか。


岩上

はい。例えばランチを食べるってなっても、安い定食屋に行くのとホテルのレストランに行くのとでは、やっぱり全然違うじゃないですか。

安田

そうですね、ホテルだとコーヒー1杯だけで2,000円とかしますから(笑)。


岩上

そうそう(笑)。でもそれを「高いじゃないか!」ってクレームを言う人はいない。それは提供される食事だけじゃなくて、ラグジュアリーな雰囲気とかスタッフさんの丁寧なサービスとか、要するにその「空間・場」に、安いお店にはない付加価値を感じているからで。

安田

そうか。岩上さんのサロンに来るお客さんたちは「早く切って欲しい」のではなく「ゆったりと気分のよい時間を過ごしたい」と思って来店されるわけですね。


岩上

ええ。だからそういう面も含めた金額設定にしているんです。

安田

なるほどなるほど。ちなみに岩上さんでも「今日はあんまり予約も入っていなくて暇だな」なんて思う日はあるんですか?


岩上

ありますあります。そういう時って「やった!」って思いますし(笑)。だって暇な時間があるってことは、それだけお客様にご提案できる幅が増えるってことなので。

安田

じゃあよくSNSとかで「今日はこの時間帯が空いてます」みたいな集客をやられているお店もありますけど、岩上さんはそれはしない?


岩上

しないですね。来店したお客様のご相談に乗りながらいろいろと施術がプラスされていくので、結局忙しくなりますし(笑)。

安田

笑。時間が空いている方が、よりお客さんが満足できる提案ができるし、それが岩上さんにとっては嬉しいことだというわけですね。いやぁ素晴らしい。


岩上

ありがとうございます。やっぱりお客様は「提案されること」を求めている方がほとんどだと思うんです。だから僕もできる限りそのご希望に沿いたいと思っています。

安田

岩上さんはいずれ、お客様へのアドバイスだけを専門にやられていくようになるんでしょうかね? 実際に施術するのは弟子に任せて…みたいに。


岩上

その可能性もゼロではないと思います。美容師って、本来はお客様と信頼関係を築くことに一番重きを置くべきだと思うので、そこさえしっかりやっていければ、働き方はだんだんシフトチェンジしていってもいいのかなと。

安田

なるほどなるほど。美容師さんが、施術作業だけに追われる時代は終わるかもしれないということですね。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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