小さな会社の3つの選択肢

日本には零細企業が多すぎる。これが日本の生産性を下げている最大の要因である。企業同士を合併して適切な規模・企業数にまとめなくてはならない。規模が小さいこと自体が問題なのである。こう主張しているのは英国人アナリストのデービッド・アトキンソン氏である。

経営者の間で賛否両論が別れる人物であるが、大まかに言って彼の主張は正しい。明確なウリがない中小零細企業はもう生き残っていけない。これは事実だと思う。まず人が確保できない。待遇を良くするには受注単価を上げる必要があるが、明確なウリがない会社にはこれが出来ない。

発注先と交渉するにはある程度の納品規模が不可欠である。これだけの仕事を受けてくれる会社はそう簡単には見つからない。そう考えるから値上げ交渉にも応じてもらえるのである。価格を上げることで従業員の待遇が改善できて採用力もアップする。つまり中堅規模に拡大することが生き残る条件なのである。

では他に方法はないのか。明確なウリがある会社なら方法はある。そこでしか買えない商品や技術を持つ会社。あるいは「どうしてもここで買いたい・この商品が欲しい」という顧客と直接繋がっている会社。こういう会社なら十分に生き残っていける。むしろこのような会社は安易な規模拡大を行ってはならない。拡大することによって価値が毀損してしまうケースも多いからである。

適切な規模と、適切な商品量、適切な価格。これを意識することで代えが効かない会社として存続していく。では明確なウリのない会社は拡大以外に方法はないのか。実はひとつだけある。それは社長自身を商品化してSNSで集客するという方法。「私がやります」と宣言することで他に代替できない価値が生まれる。

ただしこの場合、社長自身が営業もしくは納品のスペシャリストとしてスキルを磨き続けなくてはならない。人を雇って仕事を任せるということが許されないから。このパターンを選ぶなら社長以外の社員は業務委託(外注)に切り替える必要がある。個人のブランドとスキルのみで成り立つひとり法人。大変ではあるが中途半端な規模の経営者より遥かに稼ぎは多くなる。

要するに小さな会社の選択肢は3つ。1)売却・買収による中堅企業化。2)明確なウリを持つ適正規模の会社。3)社長個人を売りにしたひとり法人。これ以外に方法はない。零細経営者はそろそろ腹を括らなくてはならない。

 

 

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