2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第304回「路線バスがなくなる未来」
バスの運転手さんがどんどん辞めちゃうそうです。けっこう過酷な仕事らしくて。
安田さん、あんまりバス乗らないでしょ?
いや、乗りますよ。私は中央区に住んでいるのでバスと地下鉄は必須ですね。
そうか。安田さんは都心に住んでいるから。都バスはちょっと状況が違うんですよ。客と揉めることもないんじゃないですか?
ないですね。ほぼ時間通りに来るし、本数も多いので。遅れたとしてもどんどん次のバスが来ます。
東京でも私鉄沿線のバスはどうしても交通渋滞にはまったりするんですよ。
都心ほど本数も多くないし。
はい。だからバスが遅れて文句を言う高齢者が多いんです。
文句なんて言ってもしょうがないのに。
これが昭和だったら「うるせえ!道が混んでんだよ」って言えたんだろうけど。今それをやったらスマホで撮られて晒されて終わり。
だから運転手がいなくなるんですよ。困るのは客の方だと思うんですけど。
おっしゃる通り。
でも今は会社が運転手を守る動きになってきてますよね。
ようやくという感じですね。これまで全部そこを運転手さんにかぶらせて来たから。自分たちで首を絞めて人手不足になってるわけですよ。
見て見ぬふりをして来たってことですか。
だって明らかなカスハラを会社が放置してきたんだから。もっと早く会社が対応すべきだったんですよ。「バスが遅れても運転手のせいじゃありません」「運転手のなり手がいなかったら路線を閉めなきゃいけません」って。アナウンスしないと。
最終的にはユーザーがいちばん困るわけですからね。
困る困る。1本バスの路線が廃線になったら、ものすごく影響しますよ。
運転手を責めたって誰の得にもならない。
おっしゃる通りです。
客の側もみんなで配慮して、もうちょっと料金も上げて、給料も増やして。そしたらみんなハッピーな気がするんですけど。なぜ会社はそんな簡単なことをやらないんですか。
バス事業って国土交通省の規制でがんじがらめなんです。バス停2m動かすにも2年がかりって言うから。だから自由裁量がないんですよ。
なんと。
一方でタクシーは月収100万稼ぐドライバーが出てきてます。
そりゃ転職しますね。みんなタクシーの運転手になりますよ。
京都で高齢のタクシー運転手さんがいたから聞いたんですよ。何年目ですか?って。そしたら1人は入社4ヶ月の61歳で、もう1人は入社10ヶ月の65歳。
そんなに高齢の新人でも稼げるんですか?
その65歳の人いわく「社内で上から14番目なんですよ」って。成績が。「どうやって?」って聞いたら「アプリですよ」って言うんですよ。
65歳の方でもアプリ使えるんですね。
そうなんですよ。「こんな便利なものない」って言ってました。もう余計なことは考えない。流すとか考えない。アプリの指示通りに動くだけ。
それで稼げてしまう?
普通に前見てちゃんと運転すれば。京都はまた外国人も多いから。
外国人相手って大変じゃないんですか。
いや逆に、日本人みたいに神経質な客が少ないんですよ。
そうかそうか。アプリだったら行き先も入力して貰えばいいし。喋れなくても言葉の問題は解決できちゃう。
おっしゃる通り。アプリで決済もできちゃうから。
つまりテクノロジーがタクシーとバスの差を生んでいるわけですね。
生んでます。
だけどバスはアプリってわけにもいかないし。どうすればいいんでしょう。
バスに関しては昔から「これをやれば解決できる」と思っていることがあって。
何ですか?
路線バスにバスガイドさんをつければいいんですよ。ちょっと年配のコミュニケーション能力がものすごく高い人。それをバスガイドさんとして採用する。そしたら運転手がクレーム対応しなくていいじゃないですか。「おい、3分も遅れたじゃないか」「すいません、ちょっと混んでいて。さぁ乗って、乗って」って。
採用できますかね。そんな人。
間違いなくできます。こういう仕事がやりたい人って必ずいますし、ガイドさんがいることで運転手も定着する。
なるほど。では人不足で困っている路線バスの経営者さんは、ぜひ石塚さんに相談してみてください。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。