第305回「新卒が会社を選ぶポイント」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第304回「路線バスがなくなる未来」

 第305回「新卒が会社を選ぶポイント」 


安田

若者が「やりがいを重視する」というのは企業側の勝手な思い込みだそうです。アンケートによると2年連続で1番が給与・待遇、2番が将来性、3番が社会貢献度、4番目が休日休暇、最後が仕事内容となっています。

石塚

「衣食足りて礼節を知る」っていう諺があるじゃないですか。単純にその通りなんでしょうね。みんな平均よりちょっと上ぐらいの給料は欲しいんでしょう。

安田

新卒初任給は23万円がギリギリだそうです。それ以下だったら「もう行きません」と。

石塚

そうなるでしょうね。

安田

今の就活生はかなり強気ですね。

石塚

じつは昨日の夜、大学3年生で某女子大に通うウチの長女と話してみたんですよ。

安田

ほほう。

石塚

そしたら第1位「圧倒的にそんなのお金に決まってるでしょ」って言われました。

安田

やっぱりお金ですか(笑)

石塚

「なんで?」って聞いたら「私はどんな仕事でも楽しくやれるタイプだから」「お金が高いってことは、それだけいろんなものが整ってる」「それで選べばいいんじゃないの」って。

安田

すごい。

石塚

僕も「お前それ正解だよ」って言いました。大したもんだなって(笑)

安田

いつも思うんですけど。採用選考では企業側も損得で人を見極めているわけで。「若い人はやりがいで選ぶ」なんて考えるほうが不思議。

石塚

おっしゃる通り

安田

20代の若者だって損得で選びますよね。

石塚

絶対そうですよ。知名度や社会的なステータスも含めた待遇です。それはもう避けられない事実だと思う。

安田

どんなに給料が高くても「ブラック企業」「ハラスメント企業」には行きたくない。これも当然ですよね。

石塚

そこは大前提でしょう。

安田

やっぱり1番は給料・待遇だと。では2番の将来性、3番の社会貢献度についてはどう思いますか。

石塚

単純に「将来性があるから給料も上がっていく」という判断でしょうね。社会貢献度というのは「素晴らしいビジョン」みたいに思いがちだけど。

安田

違いますか?

石塚

ブラックの裏返しみたいな感覚だと思います。「人の役に立つ仕事がしたい」というのは「ブラックなことで利益を上げている会社には行きたくない」ってことじゃないですか。

安田

なるほど。つまり結局は金ってことですね。そしていくら報酬が良くてもブラック企業は論外だと。

石塚

そういうことでしょう。

安田

4番目の休日休暇はその通りでしょうけど、最後の仕事内容に関してはどうですか?

石塚

要するに自分の適性に合った仕事がしたいってことだと思います。

安田

なるほど。自分の得意を活かして成果を上げられる仕事というか、楽しい仕事というか。

石塚

だけどそれって働いた経験があって初めて分かってくることなので。

安田

確かに。自分の適性って働いてみないと分からないですからね。つまり新卒採用は待遇を良くするほかないってことですか。

石塚

そこは必須でしょうね。

安田

高待遇で惹きつけて、採用してから適性にあった仕事をさせる。ということでしょうか。

石塚

そうなんですけど。定着させるのは簡単ではないと思いますよ。

安田

それはどうして?

石塚

今の20代って優等生に見せるのがすごく上手で。一見すると爽やかで前向き、与えられた仕事もしっかりこなす。だけど自分軸なんてないんですよ。

安田

軸がないとどうなるんですか?

石塚

自分軸がすごく弱いから、自分のキャリアに対してプラスなのかマイナスなのかで物事を判断する。「あれだけ面談で盛り上がったのに、もう退職届出すの?」ってなるのがこの層。

安田

どういう基準でプラス・マイナスを判断してるんですか?

石塚

彼らの理想のポジションって平均やや上ぐらいなんですよ。そこに行きたいけど、あんまり自分に過剰な期待をされても困る。この感覚が分からないと辞めちゃいます。

安田

すごく前向きな受け答えをするのに、じつは過度な期待をしてほしくない。だけど平均より上のポジションではいたい。

石塚

そういうことですね。中小企業がこの層を定着させるのは至難の業だと思います。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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