第65回 働き方がインセンティブになる時代

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第65回 働き方がインセンティブになる時代

安田

我々世代は出世して役職が付いたり部下ができることが喜びでしたよね。でも最近の若い人はマネージャーになると辞めてしまうことも多いと聞きます。どうしてなんでしょうね?


渡邉

まず一つには、出世して収入が増えても、責任の重さやストレスの大きさを考えると割に合わないと感じる人が増えているんだと思います。

安田

ああ、確かに。例えば中国だったら、マネージャーになると収入が2倍3倍になることもザラですよね。でも日本だと、現場の営業マンにちょっと手当がついたくらいの金額しかもらえず、しかもプレイングマネージャーを求められることが多い。


渡邉

そうそう。その辺がもう限界なんだと思いますね。あとはそもそも出世したり人の上に立ちたいというところにモチベーションがない気がします。

安田

なるほど。昔は「課長や部長などの肩書きがもらえる」こと自体が、出世のインセンティブとして大きかったわけですけど、もうそこは非常に弱くなっていると。


渡邉

立場が上になることを求めないですよね。昔はそれこそ「出世することこそが名誉だ」という感覚が当たり前にありましたけど。

安田

社員が10人いたら8人は「まずはマネージャーになりたいです!」と答えてましたもんね。ご近所さんとの世間話でも、「いや~、うちはまだ係長なんです」とか「ようやく課長になれました」みたいな会話が繰り広げられていたりして。


渡邉

今思えばほほえましい時代でしたよね(笑)。逆に言えば、「会社に入ったら出世して上を目指すものだ」という文化を目の当たりにしていない若い人からしたら、意味を見いだせないのも当然かもしれません。

安田

そうですね。この時代に、現場で活躍した「ご褒美」として肩書きをあげている感覚の社長さんは、そろそろ気付いた方がいい。それは何のご褒美にもなっていませんよと。


渡邉

うーん、確かに。もう今はそこに価値がなくなっているということですよね。

安田

もちろん全員が価値を感じなくなったわけではないでしょうけど、かなり少数派でしょうね。


渡邉

実際、中小企業で課長や部長になったからといって、社会的に通用するようなブランド的な価値が手に入るわけでもないですし。

安田

まぁ大企業の取締役の次くらいのポジションになれば、億単位の決裁権もありますけどね。中小企業だったら、肩書きがあってもオーナー以外は実質権限はあってないようなものですから。

渡邉

ご褒美でマネージャーにしたところで、その役割が果たせるとは限らないですしね。現場で営業ができたからといって、必ずしもマネージャーに向いてるわけじゃない。むしろうまくいかないケースが多い気がします。

安田

わかります。そういうタイプのマネージャーって、自分がやってきたことをそのままやらせて、売れなかったら叱ったりプレッシャーをかけたりというマネジメントをやりがちなんですよね。結果、どんどん人が辞めていってしまう。


渡邉

そうそう。無意識に自分の成功体験にすがってしまうというか。

安田

本当は1人1人に最大のパフォーマンスを発揮してもらうために、それぞれに合わせたマネジメントをしないといけないんですけどね。


渡邉

本当にそうですね。とにもかくにも、出世して役職が上がっていく以外のモチベーションを考えていかないといけない時代になりました。安田さんはどんなものならモチベーションになると思います?

安田

まず一つはやはり「報酬」でしょうね。無理に役職を与えず、今と同じポジションのまま給料だけが増えていく。これはシンプルに嬉しいと思います。あともう一つは「在宅リモートワーク」ですよね。


渡邉

ああ、なるほど。ご褒美としてのリモートワークってことですね。仕事を頑張ると働き方の自由度が増すと。それはいいかもしれない。

安田

そうそう。というか、それができない会社は採用も定着も難しくなってくるんだと思います。今は共働き家庭がどんどん増えていて、専業主婦は日本全体で3割切ってますから、そもそもどちらかが在宅してないと回らないんですよ。


渡邉

なるほどなぁ。昔は旦那さんが家族全員分の給与を稼いで、奥さんがワンオペで家事育児をやる、というのが当たり前でした。でもそれが通用しない時代になったということなんでしょうね。

安田

そうなんですよ。奥さんだって仕事をしたいし、やりがいも欲しいわけですから。

渡邉

そりゃそうですよね。これからもっと共働きが増えてくるでしょうし、家のことも分担してやるのが標準になってきてることを考えると、夫婦そろってフル出社だと成り立たないですよね。

安田

世界基準では昔からそうですからね。だから最低でも週2日はリモートじゃないと。しかもリモートと言っても「在宅」じゃないと意味がないわけです。

渡邉

ああ、確かに。どこかに事務所を借りてリモートをしていたら、出勤しているのと変わりませんからね。とはいえ、入社したばかりの人に在宅で働いてもらうのはちょっと厳しいですよね。

安田

それはなかなか難しいと思いますよ。「まだ慣れてなくて倍の時間かかっちゃいました」と言われても、倍の給料を払うわけにはいきませんし。まずは出社して仕事を覚えてもらって、在宅に切り替えても問題ないか判断するしかない。

渡邉

逆に言えば、「ある程度活躍できている人にしか渡せない報酬」ということなんでしょうね。

安田

そうですね。例えば2年で1人前になったら、まずは週1日は在宅OKで、次に自己管理できて結果を残せるようになったら、2日3日と増やしてあげる。活躍すればするほど在宅リモート日数を増やせるわけで、だからこそ頑張るモチベーションになると。

渡邉

確かに、転職してもすぐに得られる待遇じゃないですし、出世よりも遥かに喜んでくれそうですね。その結果、定着率にもつながると。

安田

そうそう。会社としてもお金じゃなく働き方でインセンティブを渡せば、利益が目減りすることもない。ベストな選択肢だと思いますね。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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