「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。
第34回 営業部門と納品部門は仲が悪い?
前回の対談でも話に出ましたけど、「お客さんに商品を売る人」と「商品をつくる人」がいるじゃないですか。つまり営業部門と納品部門ですが、この2つって昔からあんまり仲が良くないとされていて。なんというか、お互いに「自分たちがいるから仕事が成り立っているんだ」と思っているというか。
なるほど(笑)。まぁ気持ちはわからなくもないですけどね。
営業は「俺たちが仕事を取ってくるからお前らが食えているんだ」と思っているし、納品側は「その商品を作っているのは誰だと思っているんだ」と考える(笑)。西崎さんはどっちの考えに近いんですか?
いや~それは「どちらも同じだけ重要」という考えですよ、もちろん(笑)。実際ウチの会社だと、その2部門の折り合いが悪いっていうことは全然ないですから。少なくとも「俺があいつらを食わせてやっているんだ」みたいな考えは互いにないはずです。
ほう、そうですか。ただ現実的に、立場のバランスがどちらかに振れているケースはあると思うんです。「商品がいいから営業が頑張らなくてもバンバン売れていく」という状況だと、やっぱり作る側が強くなる。逆に「商品はイマイチだけど営業が優秀だからすごく売れている」という状況なら営業側が強くなる。
仰ることはよくわかります。実際知り合いの経営者さんから、そういうバランスの悪さに悩んでいるという話も聞きますし。ただ、ありがたいことにウチはそういう意味ではすごくバランスが取れています。むしろ互いに尊重し合っているというか。
うーん、それが一番の理想ですけど、それは経営者の贔屓目なんじゃないですか?(笑) 実際の社員さんたちはまた感じ方が違うのかもしれない。
笑。まぁもちろん僕から見て、という話ではあるんですけどね。ただ、実際に彼らと同じ空間で仕事していて、両者の間にバチバチとした雰囲気を感じたことがないんですよね。不穏な空気が流れていることがないというか。
へぇ~、それは素晴らしいなぁ。ちなみに、仮に西崎さんがこれから別の組織を作る、あるいは一人でフリーランスとしてやっていくことになった場合、営業と商品(納品)、どちらに注力しますか?
そうだなぁ。それで言うとやっぱり最初は営業寄りになるかもしれませんね。本当は商品の方に寄せたいんですけど、自分が営業としてキャリアを積んできた人間なので。逆に言えば、僕がエンジニアやデザイナー出身だったとしたら、商品の方に寄るのかもしれませんね。
なるほど。私も営業の経験しかないので、きっと西崎さんと同じ感じになると思います。ただね、究極的には私、「営業を世の中からなくしたい」と思っていたりもするんです。厳密に言えば、「売らなくちゃいけないという意味の営業」ということですが。
つまり、純粋な提案力とか商品力だけで売れるような世の中の方がいいだろうと。
そうそう、まさにそういうことです。
そこについては僕も同感ですね。顧客視点で考えると、「売る」っていう工程にはあまり価値がないなって思うので。だったらその部分をできるだけ削って、本当にいい提案とか本当にいい商品の方にコストを割いていった方が、顧客に提供できる価値は大きくなるだろうなと。
仰る通りだと思います。まぁ、こうやっていろいろ考えてはみても、お客さんって割と感情で物を買うんですけどね(笑)。提案内容や商品力じゃない、「この営業さん、なんとなく信頼できそう」みたいな部分が決め手になったりする。
お互い人間ですからね(笑)。そういう部分も想定しつつ、営業と納品互いに協力しながら、顧客に最大の価値を提供していきたいと思います。
対談している二人
西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社 代表取締役 最高経営責任者
1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。