このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/「静かな退職」を選択する人々
Fintech領域の「パイオニア的存在」の某大手さん。
先日、事業部長のTさんとの宴にて、「静かな退職(quiet quitting)」について色々とご意見をお聞かせいただきました。
最近、人事界隈の方々との雑談でも「頻繁に耳にする」こちらのワードですが、意味するところは、
「実際に会社を辞めるのではなく、職務に対する思い入れや熱意を失い、心理的に会社を去っている状態」とのこと。
・組織に在籍しながら契約上義務づけられた必要最低限の業務だけを行う
・実際に退職をするわけではなく、退職が決まった従業員のような余裕をもった精神状態で働く
・キャリアアップや昇進などを目指さずに必要最低限の仕事をこなす
・仕事とプライベートの境界線を明確に引いて、仕事に自己実現ややりがいを求めず割り切って働く
某大手調査機関の意識調査では、このような働き方を「選択、実践」している方のうち、「働き始めてから静かな退職を選択するようになった人」の割合は、「71.0%」だとのこと。
すなわち、「入社前の思い」とは異なる働き方を実践するようになった方が7割以上もいるとのことで、なかなかに興味深い結果です。
「静かな退職」という言葉は、2022年にアメリカのキャリアコーチが提唱したもので「TikTokに投稿された動画」がバズったことで一気に注目されるようになったのだそう。
「仕事はあなたの人生ではない」
「仕事が自分の人生でなければならないというハッスルカルチャー的なメンタリティーには賛同しない」
と発信されたメッセージは、特に「ミレニアル世代」からの共感を集めた「上昇志向」「ハッスルカルチャー」といった「仕事のために生きる!」という価値観とは「真逆の考え方」であり、「Z世代に強い影響」を与え、ムーブメントとなったようです。
そのムーブメントは、コロナ禍による「経済混乱」、「先行き不透明な将来」に不安を持つ人たちや「仕事のために生きる」という考えに疑問を持つ人たちが増えたことで、「ベテラン世代にも強い影響」を及ぼしてきているのだそうです。
実際に、アメリカでは「高収入の25〜55歳男性」の労働時間が減少しており、働き盛りの世代さえも「静かな退職を実践」している可能性が高いデータもあるのです。(2019年から2022年にかけてアメリカでは総労働時間が大幅に減少)
「従来の『正しいっぽいキャリア像』はなくなりつつあり、会社頼みではなく自分でキャリア形成を模索する『キャリア自律』について考えなければならなくなった」
さらには、
「1990年以降30年にわたり常用労働者の給与が増えていないにも関わらず、物価や社会保障費は上がり続けている現状もあるし、、」
また、
「リモートワークの普及などを通じて、生活が今までと変わった人たちもいる」
「そんな中で仕事中心ではない生活を求める人が増えたとしてもまったくもって不思議ではないですよね」
そんな話を詳細データを交えて披露してくださると「T事業部長」はと言えば、
休暇という名目で
50日ほどの語学留学。帰国前には経営視察にアジア各国を周り、そこで培った経験値を、およそ休みなく組織に還元しているという「超仕事中心な生活」を過ごしています。
それぞれの人生ですから、
「どんな『生き方・働き方』を自由に『選択・実践』するも良し!」ですが、
他にも、「サイレント退職」「あきらめ社員」「びっくり退職」「ぶら下がり社員」などなどの話題を実体験とエビデンスに基づき、詳細に語ってくださるTさんの生き方は、タカマツにとってはとても魅力的に映ったのであります。