その125 あえて言わない

年に数回、歯の検診を受けているのですが、
久しぶりに異変が見つかり、そのための検診だとわかってはいても
落胆いたします。

今回ははじめてのパターンで、
大昔に銀歯でふさいだ奥歯の中に虫歯がひろがっていたことが
数年ぶりに撮りなおしたレントゲン写真でわかりました。
それは、さすがに防ぎようがありません。

歯科衛生士さんに
「詰め物をしていても中が虫歯になるのですね」
とたずねてみたところ、金属のふさぎ物の場合、長年使っているうちに
わずかな変形が生じてしまい、肉眼でわかるものではないけれど、
結果的に菌の侵入は起こりえるんです、とのことでした。

いま、こういう歯を削らなくてはいけない機会では
わたくしは高額でもふさぎ物はセラミックを選ぶことにしていますが、
セラミックは変形しないメリットがありますか、と聞いてみました。

すると、そのことよりも材質の違いは他のメリットがある、と言いました。

材質がセラミックだと、金属より圧倒的に汚れの付着が少なく、
検診時の決められた時間(そのクリニックでは30分)から
その分だけ別のケアに労力を向けられる、
という答えでした。

そのクリニックは、待合室や診療台のモニターでもメンテナンスや
衛生環境の向上に取り組んでいるアピールを欠かさず、ネットにも対応し、
受診前日に通知を送ってくる、いわば意識の高い「イマ風」の医院です。
しかし、セラミックについて審美性以外のメリットを訴えているところは
見たことがありません。

たしかに、30分の検診時間をどう使うか、というのを
訪れた患者が考えられるわけがなく、主体はほぼ医療側であり、
なんだったら「衛生士さんたちが勝手に決めてやっていること」に過ぎません。
歯科にかぎらず、忙しいクリニックではどこでも見るからに作業に忙殺されていて、
分どころか秒を惜しんでいるように見えますが、
その立場からすると「時間を節約できる」というのがメリットだというのは
非常に興味深いことに思えます。

なぜなら、正当な根拠がある話にもかかわらず、
おそらく当事者の患者には伝わらない、ピンとこないからという理由で
そのメリットは説明もアピールも放棄されているからです。
デメリットをわざわざ言わない、というのなら、わかりますが。

わたくしがおもしろがっていますと
衛生士さんはもうひとつ、教えてくれました。

ごく小さな虫歯は、歯科医は「放っておく」判断を取るそうです。
たしかに、「これは小さいのでしばらく様子を見ましょう」と
言われたことはわたくしも過去にありましたが、
それは、虫歯を除去する=切削することで、新しいリスクを作ることにもなるからです。

これも、「プラスの意図で行なわれているが、説明を放棄された事象」の
ひとつといえましょう。

……そういえば以前、
家族の者が小さな虫歯を速攻で削って直されたクリニックがありましたが、
そう考えるとあそこって……。

 

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

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