第54回 お庭を彩るさまざまな雑木たち

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第54回 お庭を彩るさまざまな雑木たち

安田

以前雑木についてのお話をお聞きしましたが、最近はすごく価格が上がったと仰ってましたね。どのくらい高くなったんですか?


中島

昔は1本1万円もあれば買えたんですが、アオダモなんかは5~7万円くらいになっちゃいましたね。

安田

へぇ、そんなに。確かアオダモって野球のバットに使われる木ですよね。もしかして、野球をする人が増えたから高くなったんですか?


中島

いや、そういうわけでもないと思います。バットの材料になっていたのは昔からなので。どちらかと言えば、雑木としてお庭に植える人が増えたことが理由でしょうね。伸びる速度もゆっくりですし、上の方を中心に葉をつけるので、近くを歩いていても足元があまり邪魔にならない。雑木としてすごく使いやすいんです。

安田

なるほどなるほど。つまり以前もお話されていた「雑木の庭」ブームが理由だと。ちなみに杉も上の方に葉がついているイメージですけど、アオダモの代用はできないんですか?


中島

それでいうと、杉とアオダモは形が全然違うんです。杉は円錐形に伸びるので幹がすごく太くなって、先は細い。一方、アオダモは上に向かって広がっていく。それが庭に使いやすいということで、雑木の中ではアオダモの人気がすごく高いですね。

安田

そうなんですね。雑木全体が高くなったというよりは、アオダモだけ高騰している感じなんですか?


中島

アオダモが高くなったことで、他の木もつられて上がったという感じですね。アオダモ以外だとナツハゼもけっこう人気があります。日本原種のブルーベリーで、黒褐色の実を付けます。

安田

へぇ、初めて聞きました。ブルーベリーの仲間ということは、あんまり背が高くないんですか?


中島

いえ、それがけっこう大きくなるんです。山で育ったものだと3mくらいあるものもあります。こちらはアオダモと違って全体的に葉がつきます。

安田

なるほど。ナツハゼは1本いくらぐらいするんですか?


中島

成長が遅いので、育てるよりは山で採れたものが多いんですけど、それでだいたい3~4万円くらいですね。

安田

へぇ。アオダモよりは安いんですね。ちなみになぜ山から採ってくるんです? 自分たちで育てると時間がかかって採算が合わないからですか。


中島

それもあります。あとは養殖のように畑で並べて植えると、まっすぐにしか育たないんですよね。でも、山の中で育つと光を求めて曲がったりする。そういう個性的な形のほうが今は求められているんですよ。

安田

ははぁ、なるほど。ということは、畑で育てたものより、山で採ってきたものの方が高いわけですか。


中島

そうですね。実際私も、多少高くても山のものを選ぶことが多いです。畑のものは、どうしても表情がない感じがしてしまって。

安田

なるほど。他にはどんな雑木がおすすめなんですか?


中島

あとはソヨゴという常緑樹がありますが、これは成長が本当に遅いんです。1年で10cm伸びるかどうかというくらいで。岐阜が産地なので、比較的安く手に入りますし。それでも3万円くらいまで上がりましたけど。

安田

ふーむ、なるほど。そういえば、常緑樹と落葉樹を組み合わせることで冬場も寂しくなりすぎない、と仰ってましたね。

中島

そうですね。落葉樹でもヤマコウバシは、葉が春先に入れ替わるまで落ちずに残っているタイプもあります。秋になるときれいなオレンジ色に色がつくので見応えもありますよ。

安田

へぇ。落葉樹なのに葉がずっとあるんですか。目隠しにもなって季節の変化も楽しめるのはいいですね。

中島

ええ。紅葉がきれいなものだとドウダンツツジもおすすめです。紅葉の時期だけでなく、新緑もすごくきれいなんですよ。

安田

いろんな種類があるんですねぇ。紅葉といえばモミジのイメージが強いですけど、他にもいろいろあってそれぞれの変化を楽しめそうです。ちなみに50~60坪のお家の庭だと、何本くらい使うものなんですか?

中島

少なくとも5本くらいは植えさせていただきますね。

安田

ということは、昔は5本植えて5万円くらいだったのが、今はその3倍~5倍くらいになっているわけですよね。5年後10年後にはさらに高くなっていくんでしょうか?

中島

使いやすい大きさまで成長したものは、昨今の雑木の庭ブームでほとんど採りきってしまってると思うんです。だから値段が上がるだけじゃなく、雑木の庭を作りたくても作れなくなる可能性もあると思います。

安田

なんと、そうなんですか。雑木自体が貴重なものになっていると。なんだか不思議な感じですね。木材として使えなかった「雑」木が貴重品になるなんて(笑)。

中島

そうですね(笑)。木の世界もなかなかおもしろいです。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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