2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第313回「工業高校とFラン大学」
工業高校の求人争奪戦がすごいみたいです。なんと求人倍率20.6倍っていう。
今は工業高校を出ても就職しなくなってるんですよ。
大学に行くってことですか?
大学というより専門学校ですね。
なるほど。より専門性を極めていくと。
というより親の自尊心だと思います。高卒だとちょっと恥ずかしいから専門学校ぐらい行かせようって。
専門学校を卒業すると就職って有利になるんですか。
専門学校によりますね。SEとかエンジニアだったら即戦力性が高まるから有利だし。まあ基本的に専門学校って就職から逆算して作ってるから。就職で不利になることはないです。
なるほど。
工業高校は入る時に機械科、電気科、情報処理科って決まっていて。
工業高校にもIT系の学科があるんですか。
もちろんあります。
そういう方が専門学校に行くんでしょうか。機械科は卒業したら就職するイメージですけど。
機械科を出て自動車整備の専門学校に行く人もいます。今はこれが王道ですね。電気科を出て電気工事士の専門学校に行くとか。
そうなんですね。これだけ求人が増えたら専門学校なんて行かなくてもいい求人ありそうなのに。
下手な大学に行くより有利でしょうね。
そうなんですか。
新卒一括採用だとエントリー者を大学ランクで分けるじゃないですか。そうすると聞いたこともないFランクの大学って不利なわけですよ。
だけど給与体系は大卒になるわけですよね。
給与体系は確かに大卒だけど、有名企業や大企業に入るには高卒の方が有利な訳ですよ。
そうなんですか。
はい。工業高校を卒業した時点でこれだけ求人来るわけだから。大手の製造現場に入れる可能性なんていくらでもあります。
それは推薦で決まるんですか?
はい。大手は学校推薦枠があって。成績のいい子から指定席があるんですよ。情報処理科だったらNECとか、富士通とか。機械科、電気科だったら信越化学工業の新潟工場とか。
工業高校ってやんちゃなイメージがあるんですけど。私の先入観でしょうか(笑)
おっしゃる通り。工業高校がヤンキー系だってことは否定しないです。だけど手に職があるから。実習で旋盤切ったり。それは強いですよ。即戦力性は大卒と比べものにならない。
とはいえ大卒のFランクより給料は下ですよね?
いやいや。僕が工場勤務を勧める理由は初任給がめちゃくちゃ高いからなんですよ。高卒でも38万という求人があります。
え?38万!
ありますよ。
お金貯まりそうですね。
工場って地方にあるからお金も使わないし。家賃も安いし。
じゃあ20代で家を建てられますね。
もう余裕ですよ。
早く結婚して、子供が2〜3人いて、絵に描いたような幸せな人生じゃないですか。
おっしゃる通り。ただ親がそれをOKと言うかどうかですよね。
親は反対するんですか?Fランクでもいいから大学に行けと。
そう。単に親の見栄というかイメージだけの問題です。
でも大手に入れるのって一部の生徒だけですよね。
工業高校のトップレベルですね。ほとんどの求人は地元の中小企業です。でも中小企業の中にもいい会社ってたくさんあるんですよ。
給料や待遇もいいんですか?
大手ほどではないけど。いい会社はたくさんあります。本当はもっと給料を増やせばいいんですけど。
中小企業がそれをやったら利益が出なくなりますよ。
利益を出したって税金で取られるだけだから。そのぶん給料を増やして、いい人材をどんどん採っていけばいいんですよ。人材を確保した会社が最終的には勝つんだから。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。