第86回 経営者としての適正があるのは、どんな人なのか

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第86回 経営者としての適正があるのは、どんな人なのか

安田

私は中辻さんに初めて会った時から「この人は絶対経営者に向いているな」と思っていまして。実際に何度もお伝えしていたと思うんですけれど(笑)。


中辻

そうですね。「むしろ経営者以外は向いてないですよ」みたいに言われたの、今でも覚えてます(笑)。

安田

笑。ちなみに中辻さんご自身はどう思っています? 「私は経営者になるべくしてなったんだな」と思っているのか、「別に私じゃなくても誰でもできるよ」と思っているのか。どっちでしょうか?


中辻

えー…難しいですね。経営者に向いていたのかどうか、自分ではよくわからないです。ただ私よく「頭の回転が早いね」って言ってもらえるんですが、それは経営者にとって重要な能力かもしれませんね。

安田

確かに早いですよね。何かを投げればパッと返ってくるというか。他に経営者に必要な能力って何だと思います?


中辻

そうですねぇ。あとは攻めどきを見極める力というか、いわゆる「決断力」かなぁ。最近私もそれを痛感しまして。

安田

ほう、何かあったんですか?


中辻

以前にもお話しましたが、新規事業としてベニエ屋さんを始めたんです。11月14日にプレオープンしたんですが、そこに至るまでに決断しないといけないことが多すぎて(笑)。

安田

そうでしたか(笑)。お店をイチからオープンさせるとなると、まさに「決断の連続」ですよね。お店の名前を決めたり、導入するマシンを用意したり、スタッフを揃えたり。


中辻

そうなんですよ。特にマシンについては、初めてのことだったので大変でしたね。「どんなものを買うのか」「いくらまでなら先行投資できるのか」など、とにかくすべて私が決断しなくてはいけなくて。

安田

ちなみにマメノキカンパニーの設立当初はどうでした? 当時もいろいろと決断しなくてはいけない場面が多かったと思いますが。


中辻

昔はお金に関することは久保さんに相談しまくってたので(笑)。「自分の決断が間違っていて、会社に損失を出してしまったらどうしよう」という不安が大きくて、何度も何度も聞いてましたね(笑)。

安田

そうだったんですね(笑)。でも中辻さんはどう考えても決断力がめちゃくちゃありますよ。だって「家を出たいから15歳で結婚して出産する」とか「旦那に見切りをつけて17歳ですっぱり離婚する」とか、ものすごく潔い決断じゃないですか。


中辻

あぁ…それで言ったら「自分の人生」に関する決断なんて、簡単なものなんですよ(笑)。

安田

えぇ?! そんなことないと思いますけど(笑)。


中辻

だって失敗しても自分が困るだけじゃないですか。でも「会社」に関する決断は、極端な話、倒産しちゃって部下が路頭に迷う可能性もある。だから人生の決断の方が数倍簡単です(笑)。

安田

ははぁ…そういうもんですか(笑)。多くの人はそれができないと思うんですけどね(笑)。ところで私はこれまでに多くの社長さんを見てきたんですが、「頭の回転の速さ」や「決断力」に特別秀でてなくても、社長ってできちゃうんですよね。


中辻

え、そうなんですか?

安田

はい。お前は何様なんだと言われそうですが、中小企業の社長さんの中には、優柔不断で決断力もないし頭の回転も遅いって人が少なくない。「親から会社を受け継いで、そのまま社長になっただけ」とか「とりあえず一度、社長というものになってみたかっただけ」みたいな人がけっこういるんです。


中辻

へぇ…「こういう事業がやりたい」からじゃなく、「社長になること」が目的なんですか?

安田

そうそう。実際、社長って別に何の資格もいらないじゃないですか。法務局で書類さえ出せば誰でもなれちゃう。でも、だからこそ私は、「社長」と「経営者」は似て非なるものだと思っているんです。


中辻

なるほど〜。社長は書類一つでなれちゃうけど、経営者には誰でもなれるわけではないと。

安田

そうそう。会社を「経営」するには、それこそ頭の回転の早さや決断力が不可欠です。社員に対する責任感もいりますしね。そして中辻さんにはその素質がすべて備わっている。こんなに「経営者向き」の人はいませんよ。


中辻

うーん、そうなんですかね。やっぱり自分ではわからないです(笑)。だって私、気分屋なところがあるので、経営も感情で決めちゃったりしますよ?

安田

へぇ、そうなんですか(笑)。それはちょっと意外かもしれない。


中辻

そういう意味では、「一人で経営をしている」という感覚ではないのかもしれません。私が至らないからこそ、周りが助けてくれる。私はそういうチームプレイの経営に向いているのかなと。少なくとも、あれこれ完璧にこなすスーパーマンのような経営者ではないです。

安田

確かにオーナー業の社長は、そういうタイプの人も多いかもしれない(笑)。


中辻

そういう完璧過ぎる人って、部下もあんまり助けてくれなさそうじゃないですか(笑)。だから私みたいにちょっとクセがあるというか、頼りない部分があるくらいがちょうどいいってことなんです多分(笑)

安田

笑。でも実際、そうかもしれません。頭の回転の早さや決断力だけじゃなく、そこに「ちょっとした頼りなさ」があることが重要な気がしてきました。そういう意味でも中辻さんは完全に経営者向きだ(笑)。


中辻

ありがとうございます(笑)。そういう基準なら「確かに私は経営者向きだ」と思えます(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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