この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第89回 自分の記憶を入れ替えて、人生を変える方法
第89回 自分の記憶を入れ替えて、人生を変える方法
今日は私の人生を変えてくれた本を、鈴木さんにご紹介したいなと思います。
へぇ! 安田さんの人生が変わった本、興味ありますね。どんな本なんですか?
西田文郎(にしだふみお)さんという方、ご存知ですか? イメージトレーニングの研究や指導のパイオニア的な存在の方なんですが。
お名前は存じています。プロのスポーツ選手にメンタルトレーニングもされていませんでしたっけ?
そうですそうです。その方が書かれた『憶聴の法則: 圧倒的に突き抜ける人の「脳」の秘密』という本なんですけど。
憶聴(おくちょう)ですか…。いったいどんな内容なんですか?
簡単に説明すると、脳の一番深いところ、つまり原始的なところにある記憶が人間の価値観や行動を司っていると。で、そこにある記憶を入れ替えることで人生が大きく変わるんだということが書かれているんです。
記憶を入れ替えると人生が変わる…? ちょっと理解が追いつかないです(笑)。
笑。脳の一番奥深くにある記憶を書き換えることで、無意識のうちに自分の性格や行動や判断基準も変わってくると。すると人生そのものも変わっていくんだそうです。
ふーむ。それはつまり記憶を変えると、価値観が変わるということなんでしょうか。
ええ。そもそも私は以前から「記憶そのものが人間を作っている」と思っていまして。つまり体はただの容れ物で、記憶が入れ替わってしまえば赤の他人のようになってしまう。
ははぁ…記憶喪失になってしまったら、その人はもう記憶喪失になる前とは同一人物だとは言えない、というわけですか。
そうそう。だからこそ、脳内の記憶や知識を入れ替えていけば人生が変わるというのはなんとなく理解できたんですね。さらにこの本には、「神様に毎日感謝している人」は脳の一番奥深い憶聴の部分の記憶が入れ替わり、めちゃくちゃヤル気が出て、ハッピーになれるって書いてあったんです。
ほう。…それってどんな原理なんですか?
それを私が説明しても正確にはお伝えできないので、ぜひ本を読んでいただければ…(笑)。とにかく私が感動したのは「神様は、脳にとって非常に大事」という言葉で。別に特定の神様である必要なくて、自分なりの神様を作り、拝めばいいんですって。
それをすることで、脳の深い所の記憶が入れ替わって人生も変わるんですか。へぇ…わかるようなわからないような…(笑)。それで実際にはどういうことをするんですか? 神社とかお寺にお参りに行くわけですか。
いやいや、毎朝10個の対象に対して感謝するだけです。先祖や親、友達、お世話になった人など10個に対して「ありがとうございます」と述べるだけ。やってる時間は30秒もかかりませんよ。
え、それだけでいいんですか?
そう、これだけ。それで人生変わるんだったらお得でしょ?(笑) そもそも私はこの数年、人生に対して「こんなもんだろう」という想いを抱えていまして。会社が潰れてから10年、「自分はもう年だし、やることはやった。だからワクワクしなくなってきているのもしょうがない」と思っていたんですね。でもこの本を読んだことで、自分自身で憶聴の記憶を書き換えてしまっていたんだと気づいたんです。
「自分の人生、やりきった」というように、自分の記憶を作り変えてしまっていたということですか?
そうなんです。でもやっぱり60歳からの人生もワクワクしている方がいいなと思いまして。だから脳の一番深いところにある記憶を上書きしようと決めて、「10個に感謝する」っていうことを実践し始めた。そしたら3日で人生が変わったんです。
へぇ〜たった3日で? すごいなぁ。でも確かに、ビジネスでも芸能でも何かでバーっと成功している人って、神社とかお寺を定期的にお参りしている人が多い印象ですよね。かくいう私も、実はこの1年、毎月伊勢神宮までお参りに行くようになったんですよ。
おぉ、そうでしたか! それは何がきっかけで?
妻に連れられて、半ば無理やり…(笑)。あとは、先輩経営者たちに「月参り、ちゃんとやってるか?」って聞かれることが多かったことも影響しています。「せめて地元の神社くらいは毎月行っておけ」なんて言われたので、じゃあとりあえずお参りしておくか、と(笑)。
笑。でも行動することが大事らしいですから。何か変わってきた感覚はありますか?
…あんまりわからないです(笑)。たぶん安田さんのように真剣に心から感謝しながら手を合わせてないからかもしれんなぁ(笑)。
そうだと思いますよ(笑)。というか私は、会社を潰していることもあって、どこかで自分自身の過去を否定している部分がありまして。だから「過去のことは終わったこと。過去を切り離して新しい人生を生きるべきだ」と思ってここまで生きてきたんです。
過去のことは振り返らないと決めたわけですね。
そうそう。でもこの本を読んで、結局のところ過去を肯定しないと未来は見えないということがわかったんです。
なるほどなぁ。確かに過去の出来事も、終わったこととはいえ、自分がしてきたことですもんね。つまり過去を否定するってことは、もう1人の自分を否定することになってしまうわけでしょ?
そうなんですよ! そうやって私は知らず知らずのうちに自分の意識を書き換えてしまっていたんだなぁと、この本を読んで気づけたわけです。
じゃあこの本にも感謝せんといかんね(笑)。
そうそう。だから感謝の印として、いろんな人にこの本を薦めて、かれこれ10冊くらい売りました(笑)。頼まれてもないけど、私が勝手に(笑)。
なるほど。じゃあ僕も買っておきますね(笑)。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。