第96回 経営者の子どもは、経営者になりたがる?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第96回 経営者の子どもは、経営者になりたがる?

安田

中辻さんには娘さんがいらっしゃいますが、「私もママのような経営者になりたい」って言われたらどうします? 反対します?


中辻

反対はしないですね。「やりたかったらやったらいいけど、大変やで〜」とは言うと思いますけど(笑)。

安田

なるほど(笑)。でも実際子どもが仕事を考える時って、親の影響ってかなり大きいんですよ。だから中辻さんの娘さんが「経営者になりたい」っていう可能性は結構高いと思っています(笑)。


中辻

そうかもしれませんね(笑)。ちなみに今ウチの娘、『コビトベニエ』で働いているんですよ(笑)。

安田

そうなんですか!


中辻

ええ(笑)。というのも娘が小さい頃から私はずっと仕事で帰りも遅くて、娘がご飯を作ってくれることが多かったんですよ。それで今でもお料理するのが好きだからっていうことで、キッチンで働いてくれています。そういう意味では私の影響もあるんだろうなぁと。

安田

そうでしたか。そのうち「コビトベニエの経営も私に任せてよ」なんて言い出すんじゃ?


中辻

それはさすがにないと思いますけど(笑)。とは言え、周りをよく見ながらすごく頑張って働いてくれているって、他のスタッフさんからお褒めの言葉をいただいています。

安田

素晴らしいですね。娘さんは確か今高校3年生ですよね。もう卒業後の進路は決まっているんですか?


中辻

今はまだ何をやりたいかが決めきれていないみたいなんですよ。今年の抱負も「やりたいことを探すこと」みたいに言っていたので、たぶんいろいろ迷っているんでしょうね。

安田

とりあえず進学しとくか、という風にはならなかった?


中辻

ある専門学校に行こうかなって言っていたんですけど、調べていくうちにあんまり魅力を感じなくなっちゃったんですって。それでなんとなく進学するよりは、ウチのお店で社会勉強しながら「将来自分が何がしたいかを考えます」って言っていました。

安田

いいですねぇ。ちなみに中辻さんご自身も自分で道を切り開いて生きてきた方じゃないですか。だから娘さんに対しても、「自分でご飯が食べていけるだけの最低限のスキルは身に着けさせたい」って考えているんじゃないかと思うんです。そのあたり、どうですか?


中辻

それはもう、全く仰るとおりです。だから将来のためにも、高校卒業したら専門学校に行った方がいいよって言ったんです。でも本人が乗り気じゃないのに、無理やり行かせるのが果たして正解なのかどうなのか…と葛藤もしていて。

安田

ふーむ、なるほど。ベニエ屋さんのお仕事は、自分からやりたいって言ってきたんですか?


中辻

そうですね。「今はまだ、将来何をしたいか決まっていない。でもお金は貯めておきたい」って言ってたんで、「じゃあウチでバイトしたら?」って言ってみたら、「やりたい」って。私としても娘が働いてくれることですごく助かっているので、続けられる限りは続けてほしいなと思っています。

安田

それで将来的に跡継ぎになってもらおう、と?(笑)


中辻

娘は「いつまでもママのところで働く気はさらさらない」って言ってます(笑)。でもまあ仕事は楽しくやってくれているので、それでいいかなと。

安田

なるほどなぁ。ちなみに中辻さんから見て、娘さんは経営者に向いてそうですか?


中辻

いやぁ〜どうなんでしょう。今のところそんな気配は全然…(笑)。今はまだ自分で手を動かしてオペレーションしている方が楽しいみたいですけどね。とは言えまだ19歳なので、先のことはわからないですね。

安田

私が中辻さんの立場だったら、商売に関する話は子どもにいっぱいしたくなっちゃうと思うんです。「このお店っていったいいくらの売上で、どれくらいの経費で成り立っていると思う?」みたいに。中辻さんはそういうのってあまりないんですか?


中辻

ないですね(笑)。娘も売上に関しては興味あるみたいですけど、せいぜい「今日1日頑張って、どれくらい売れたのかな」っていう程度なので。でももしかして、私がそういう風に話を持っていかないといけないんですかね?(笑)

安田

押し付けるというより、選択肢を広げるイメージだと思います。というのも、若い頃の「やりたいこと探し」って、どうしても「職探し」になっちゃうんですよ。でも世の中はもっといろんな可能性がある。それにこれからの時代、商売感覚を身に着けている人は強いと思いますし。


中辻

それだったら一度は私の元から離れて、全然違う会社に就職した方がよくないですかね? ウチって結構特殊な会社だから、ここしか見てなくて経営者になっちゃったら大丈夫なんかな、って思うんです(笑)。多少は社会の荒波に揉まれたほうがいいんじゃないかと。

安田

個人的には、そういう特殊な経験は早めにした方がいいと思いますけどね。その上で他の会社も見ることで「こういうところが自分の会社とは違うんだな」というのが勉強になりますし。一般的な「社会人としての基本」みたいなものを身に着けたところで、今はもうあんまり役には立たない時代になってきましたから。


中辻

ああ〜確かにそうですね。じゃあこの1年で、娘が経営に興味を持てるような話もちょこちょこするようにしてみようかな(笑)。

安田

ええ、ぜひ。私の予想が正しければ、そのうち娘さんの方から「経営者になりたい」って言ってくると思いますよ!(笑)

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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