“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第93回 「商売の波」に飲まれない経営とは

例えば昔「たまごっち」っていうのがありましたが、あれも人気の有名人がたまたま持っててブームになったと記憶しています。ああいう偶然起きた流行の波に、ビジネスとしてどこまで乗るべきかっていうのを、今日は聞きたかったんです。

面白いテーマですね。「商品」に関して言えば波に乗りすぎるのはリスクだと思います。というのも、波のてっぺん、つまり「ピーク」が高くなればなるほど、その後の苦労も大きくなるんですよね。ユニクロもフリースが爆発的にヒットしましたけど、そのヒットがとんでもなく大きかったからこそ、第2第3のフリースを作るのに相当苦労したと思います。

彼らは数百年という単位でブランドビジネスをやってますからね、瞬間的な利益よりも、長期的に価値が続くことを優先するわけです。ただし、これはあくまで「商品」の話であって、「サービス」については少し考え方が違うと思っています。

「サービス」は商品と違って、固定された形がありません。市場のニーズや時代の変化に応じて柔軟に進化できる。そのため、いい波が来たら一気にアクセルを踏んで広げるべきだと考えています。波に乗らない=せっかくの成長機会を逃すことになりますから。

なるほど。たしかに今、万代さんは狙ったマーケットがドンピシャで当たってますよね。新店舗を出すたびに集客も口コミも増えて、ブランドもどんどんできていく。単なる商品の売れ行きではなく、「リユース×アミューズメント」というサービスがうまく当たっている。こういう時は、慎重になりすぎず、攻めた方がいいと。

そうですね。もちろんリスク管理は大事なんですが、過度に慎重になるとチャンスも逃してしまうので。商品と違って、サービスは形がない分、常に進化させやすい。むしろ進化を止めた瞬間に劣化が始まるわけです。

仰るとおりです。ビジネスモデルにおいても、アクセルを踏みながら、少しずつでもブラッシュアップしていかないといけないんです。成功した形をそのまま広げるだけでは、いずれ市場の変化に対応できなくなってしまうので。

そうか。1つのやり方だけを広げていくということは、1つの商品を大量に売るのとある意味同じような戦略ですもんね。それだけに頼っていたら、どこかで行き詰まってしまう。「波に乗る=市場に生まれたチャンスにスピーディーに対応する」ことは大事だけど、それに乗ったあとも進化を止めたら意味がないと。

流行ってる間はいいんですよ。でも進化できないとどこかで一気に陳腐化してしまう。しかもフランチャイズは現場で自由に手を加えられない分、どうしてもフットワークが重くなる。そういう意味でも陳腐化が加速してしまう側面があって。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。