「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。
第114回 決裁権の有無で、コミュニケーションは変わるのか?

中辻さんのところに依頼をしてくる人って、どんな方が多いんですか? やっぱり決裁権を持っている人が直接依頼してくることがほとんどですか。

そういった「営業担当」が窓口になった場合、中辻さんはどういう対応をしていますか? というのも決裁権がない人が窓口になると、何を相談するにも上司にお伺いを立てなきゃいけないから、なかなか話が進まないじゃないですか。実際私も現場で困ることが多いんですよ。

言わない言わない(笑)。私が伝えたことがどこまで社長さんに伝わっているのかなあと心配になることはありますが、その人が言っている言葉=社長さんの言葉だと捉え、提案は全力でしますよ。でもね、そういうパターンって往々にしてうまくいかないことが多い。

そうなんですよね。以前「社長とオンラインミーティングしてもらえませんか?」って頼まれたのでそうしたら、担当者さんから聞いていた話と全然違っていたことがありまして…。社長は社長で「こういうことをやりたい」っていうビジョンがあったようなんですが、それが社員さんには全く伝わってなかったようなんです。

ありますあります。例えばチラシに打ち出すコンテンツの部分で、「社長さんの希望通りにしても効果が見込めないですよ」って言ったら、「じゃあ中辻さんから社長に言ってもらえませんか?」みたいなお話によくなります。

すごいですね(笑)。でも頭の固い社長も多いでしょ? 私も経験があるんですが、自分の価値観に自信を持ちすぎているからなのか、直接説得しても全然変わらなくて。で、そうこうするうちに、社長が変わらないことに嫌気が差した優秀な社員さんたちがどんどん辞めていってしまうんですよ。

「チラシにキャンペーンをつけましょう」みたいな提案には難色を示されることが多いですね。新規のお客様に商品を知ってもらったり、一度体験してもらうことに対する「広告費」だという気持ちでやってください、って伝えるんですけど。

1円も値引きやキャンペーンをつけたくないのであれば、残念ながらポスティングという手法は合っていないので他の方法を考えませんか?と伝えますかね。頂いた販促費を反響でしっかりお返しできないと思う場合は、他の策を検討するのが誠意だと思っていますし、社長さんが納得してくれない以上は、こちらも無理は言えないので。

なるほどな〜。中辻さんだったら「どんな社長でも必ず説得する」ような必殺技でも持っているかと思いましたが、そうではなかったんですね(笑)。

残念ながらそんな必殺技はないです(笑)。とは言え、私はこれまで数々の事例を見ていて、プロの立場からアドバイスをしているので、参考になる話には、耳を傾けていただきたいなとは思いますね。
対談している二人
中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役
1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。