第98回 「庭付きモデルハウス」はいかがでしょう

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第98回 「庭付きモデルハウス」はいかがでしょう

安田

住宅販売のためにモデルハウスを建てるじゃないですか。あれって販売が終わったら取り壊すのが一般的でしたよね。でも最近は「そのまま建売住宅として売却する」っていう会社も増えてるらしいんです。


中島

へぇ、そうなんですね。今は建築業界も厳しいでしょうから、コスト削減を考えると自然な流れという気もします。それに合理的でもありますよね。お客様に見せるために内装や家具なんかも揃っているでしょうし。

安田

そうそう。まさにその内装ごと売却するんですって。それで考えたんですけど、内装だけじゃなく庭も一緒に売れたらいいんじゃないかと。その内装や家具のスタイルも踏まえつつ作ったオリジナルの庭というか。


中島

ああ、面白いですね。家具に合った景色を庭で演出するという。

安田

そうそう。イギリスのアンティークの家具だったらどうなるのか、はたまたアジア風の家具にはどんな景色が合うのか…。考えるだけで楽しそうだなぁと。


中島

いいですねぇ。古材やアンティーク石材なんかを合わせてみたいなぁ。イタリアやフランスの古材を使うと、庭にも深みが出ますし。

安田

いや〜見てみたいです。ともあれ日本人って、家の中にはわりかしこだわるのに、なぜか外は後回しになりがちなんですよね。結果、中と外との雰囲気があまり合っていなかったり。


中島

確かにそういう傾向はありますよね。景色の美しさより利便性を重視する方が多いように感じます。安田さんが仰るような家の中とマッチしている庭があると、生活がすごく豊かになるんですけど。

安田

そうですよねぇ。家の中から庭を眺めて、四季を感じたりとかね。葉の色の変化とかに気付くと「あ、ちょっと庭に出てみよう」となるじゃないですか。


中島

よくわかります。私もデザインする時にその導線はすごく意識しますし。そういう意味では、やはりリビングから直接庭に出られると気持ちがいいですよね。庭と室内が連続している感覚が得られるので。

安田

ははぁ、いいですね。縁側があったりしてね。…あ、でも先ほど言っていたようなアンティークな家具の家だと、縁側はちょっと相性悪いんですかね。


中島

そういう場合はテラスがおすすめですね。ウッドデッキや石張りテラスなど、室内の雰囲気に合わせて構成すれば違和感なくつながります。アンティーク感のあるタイルなんかもありますから、うまくマッチすると思いますよ。

安田

は〜、なるほど。ん、でも縁側でなくテラスということは、靴が必要になりませんか。出るたびに玄関から持ってくるのはちょっと面倒な気も…。


中島

そうですね。私の自宅では気軽に出入りできるように、窓のそばに靴を置いています。あとは沓脱石(くつぬぎいし)を置いたり。

安田

ああ、なるほど。縁側の下に置いてある平らな石のことですね。なんとなく和風のイメージですが、洋風の家にも合いますか?


中島

石っぽさが強いと違和感が出るので、タイル仕上げがいいでしょうね。テラスを一段高くして、そこから降りるようにすれば自然な雰囲気になると思います。

安田

それはいいですね。中島さんの手にかかれば、「アンティーク風沓脱石」みたいなものもできるかもしれない(笑)。

中島

笑。素材の選び方ひとつで、空間の雰囲気は大きく変わりますからね。そういう意味ではやはり設計段階から関わりたいですね。図面を見て後から作ることも可能ですが、早い段階の方がいいご提案ができるのは間違いないので。

安田

そうかそうか。設計の段階で「ここにアンティーク風沓脱石があるといいですよ」っていう提案をしてくれるわけですね(笑)。


中島

そうですね(笑)。そうやって最初から庭ありきで考えた方が、格段にバランスもよくなりますよ。

安田

そうですよね。うん、やっぱりモデルハウスも庭付きで作るべきですよ。これを見ている建築会社さん、ぜひ中島さんと組んで「庭付きモデルハウス」をご検討ください!

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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