第104回 雑木を美しく保つ、「切り方」の新常識

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第104回 雑木を美しく保つ、「切り方」の新常識

安田

雑木って、昔は山にただ生えているだけというか、家具や建材にならない木、という印象でしたよね。あまり庭に使われることもなくて。


中島

そうですね。昔の庭で主に使われていたのは松やマキツゲで、それ以外の木はあまり使われませんでした。そこから茨城の社長がテレビ番組で使ったことで、雑木の庭がブームになったんです。

安田

ああ、そうでしたね。そこから人気に火がついて、今では品薄になるくらい雑木を好む人が増えていると。


中島

ええ。流行り始めた15年くらい前は切り方がわからない木も多くて。それぞれの木で性質や伸び方が全く違うので、一つひとつ覚えながら切っていました。今でもきちんと剪定できる職人は少ないと思います。

安田

へぇ、そうなんですね。雑木の剪定って、これまでの庭木と比べてどんな点が難しいんですか?


中島

例えばカシのような常緑樹は、葉が密なので、多少乱れてもそれなりに見えるんです。でも雑木は葉が少なく、剪定の仕方で印象が大きく変わります。柔らかさを残すように切らないと、不自然になってしまう。

安田

ふ〜む、確かに柔らかさを残すのは技術が必要そうですね。


中島

ええ。あとは特にやってはいけないのが、枝の先っぽだけをチョンチョンと切ることですね。それをやると枝の表情が全部消えてしまいます。

安田

ということは、途中で切らずに根元から切らないといけない?


中島

そうです。枝分かれの根元から切っていきます。先だけ切ると硬く、不格好な樹形になってしまうので。自然に伸びた枝ぶりを生かしながら、不要な枝を整理していく。それが雑木剪定の基本です。

安田

なるほど。庭木の剪定というと、伸びすぎた枝を切るイメージでしたけど、雑木はそれが違うんですね。長さを調整するだけでなく、どの枝を丸ごと残し、どの枝をなくすかを整理していくことが大事だと。


中島

ええ。その木の中心となる枝が他より伸びすぎていたら、思いきって根元から切るんです。細い枝からではなく、太い枝から切ることがポイントです。

安田

えっ、でも太い枝を切ってしまうと、それこそ木の形がガラッと変わっちゃうんじゃないですか?


中島

気持ちはわかります(笑)。でもそこを思い切って切ることで、他の枝とバランスが取れて、自然な高さに整うんです。とにかく切った跡が見えないことが大事なんですよ。枝元で切れば、数年後にはそこに枝があったことも分からなくなる。

安田

は〜、なるほどなぁ。つい枝の先から切りたくなりますけど、そうすると形がどんどん不自然になっていくと。


中島

そういうことです。切る時はできるだけ付け根ギリギリで、切り口を1センチ残すようなこともしません。ただ桜などは腐りやすいので、少しだけ残すこともありますが。

安田

ああ、そうか。樹種によって細かい判断が必要な場合もあるわけですね。マニュアルがあるわけじゃないし、現場で経験しながら覚えていくしかないんでしょうね。

中島

ええ。僕も最初は試行錯誤でした。アオダモなんて、先をちょっとでも切ると不格好になりますし。どうしても気になるときは細い枝の根元で切って、切った跡が目立たないようにするなど、繰り返していくうちに少しずつ分かってきた感じです。

安田

なるほど。本当に繊細な技術ですけど、日本全国で雑木を本当にきれいに切れる人って何人いるんでしょうね。


中島

う〜ん、どうでしょう。僕が実際に見て、「この人の剪定は本当に美しい」と感じたのは、2人くらいですね。

安田

そんなに少ないんですね。雑木ブームを絶やさないためにも、ぜひ中島さんの技術を広めていってほしいですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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