第343回 舞妓さんの労働条件

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第343回「舞妓さんの労働条件」


安田

京都で舞妓さんの労働問題が勃発しておりまして。

久野

これすごいですね。

安田

日本の伝統芸能というイメージですけど。労働環境はひどいみたいです。中学3年から置屋に入ってまず外出が出来ない。ずっと拘束されてる。雇用ではなく契約書もない。

久野

完全にアウトですね(笑)

安田

休みは多くて月2回。月に5万円を小遣いとしてもらうだけ。最低賃金より安いです。しかも18歳未満なのに酒を飲まされて。スマホも取り上げられて。

久野

ちょっとあり得ないですね。

安田

いま弁護士がついて訴訟していますが相手は企業ですらないかもしれない。

久野

そうですね。下手すると、もう実態がないかもしれない。

安田

伝統芸能って昔からお弟子さんみたいな制度じゃないですか。住み込みで仕事を教えてもらって師匠のお世話をして。

久野

そういうイメージですね。

安田

これってどうなっていくんですか。住むところも食事もお世話になって、芸も教えてもらって。だけど給料はほぼ無くて。労働法的には完全にアウトですよね。

久野

僕の見解にはなりますけど。たとえば落語と舞妓は全然違う気がします。

安田

どこが違いますか?

久野

落語って芸を身につけるとか、そういう話じゃないですか。

安田

はい。

久野

舞妓さんもそれはいいと思うんですよ。ただ仕事内容がもう今の時代に合ってない。

安田

お客さんと一緒にお風呂に入らされるとか書いてありましたね。

久野

収益活動までやってるわけじゃないですか。実際に現場仕事でお金を稼いでいて。

安田

やってますね。はい。

久野

落語は一緒に付いていってるだけで、収益活動の手伝いをしているわけじゃない。

安田

なるほど。

久野

それはまだ教育として成り立つような気がするんですけど。

安田

お客さんと一緒にお酒を飲んで接客までさせているとなると、教育とは言えないと。

久野

言い方は悪いですけどキャバクラのキャストと変わらないわけじゃないですか。

安田

それで月5万円で休みは月2回。これは法的にダメってことですか。

久野

そう思います。

安田

じゃあ京都から芸妓や舞妓がいなくなる可能性もありますね。

久野

ちゃんと給料を払って労働法を守れば成り立つんじゃないですか。

安田

成り立つんですかね。

久野

成り立つと思いますよ。だって元々お金持ちが遊びに来るわけで。

安田

普通に報酬を払えるぐらいは儲かっているはずだと。

久野

そう思います。もちろん仕事内容は変えなきゃいけないですけど。セクハラみたいな仕事はやめて、本当に芸として高い報酬をもらう仕事に転換するしかない。

安田

出来ますか?

久野

そうならざるを得ないです。裁判に負けるって、そういうことじゃないですか。「もう時代に合ってません」ってことなので。

安田

相撲も十両にならないと給料が出ないらしいですよ。試合には出ていますけど。

久野

そこは結構分かりやすくて。お客さんからお金を取れるレベルじゃないってことですよね。アマチュアの社会人野球とプロ野球みたいな感じだと思う。

安田

なるほど。

久野

ただ、ずっと拘束してるのは問題だと思うんですよ。例えばコンビニのアルバイトをやりながら相撲取りをやるとか。その方が健全だと思います。

安田

お笑い芸人みたいな感じですね。

久野

そもそも未成年を拘束するのは良くないので。舞妓さんに関しては仕事の中身がまず問題です。未成年に飲酒までさせるとか。

安田

お金持ちのおじさんはそういうのを望むんでしょうね。

久野

外国人をターゲットにして、きちんとした雇用でやればいいんじゃないですか。ちゃんとやればすごく高い報酬が稼げる仕事になるかもしれない。

安田

下心見え見えの日本人のおじさんは相手にしないと。

久野

その方がずっと健全だと思います。中途半端にお金を持ってる日本人を相手にするからいけないんですよ。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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